【経済インサイド】副業の普及を阻む企業の“壁” 殻を破れない日本人の事情も





パーソルキャリアなどが昨年12月に開いた、副業に関するセミナー(東京・大手町)

 政府が働き方改革で推進している副業。東京・丸の内のオフィス街で、副業のマッチングサービスの実証実験が行われるなど、注目が高まっている。ただ、多くの企業、ビジネスパーソンが副業に踏み切れない“壁”が存在する。社員の長時間労働の助長や情報漏洩という企業側の表向きの理由のほか、内向きの企業風土や、殻を破れない個人の事情だ。

 厚生労働省は平成30年1月、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表。現在、厚労省の労働政策審議会で、副業の推進に伴う労働環境の整備づくりが進められている。

 大手企業でも動きが活発化している。ロート製薬が28年2月、自分の時間を使って社会に貢献したい社員のための制度「社外チャレンジワーク制度」を制定した。ソフトバンクは29年11月から副業を解禁。アサヒビールは30年4月から、満60歳の定年退職後に再雇用されたシニアスタッフに対して副業を解禁している。SMBC日興証券も、入社4年目以降の正社員と契約社員を対象に、英会話教室の運営や翻訳業など、他社による雇用が発生しない形での副業を認めることを検討している。

 しかし、多くの企業にとっては、副業解禁に踏み切れない事情がある。

 リクルートキャリアが30年9月に実施した企業の意識調査では、兼業・副業を容認・推進している企業は全体の28.8%(前回調査比で5.9ポイント上昇)にとどまる。禁止する理由は、「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が44.8%と最も高く、次いで「労働時間の管理・把握が困難なため」が37.9%、「情報漏洩のリスクがあるため」(34.8%)だった。背景には、外部の人材や外部の知識を「よそ者」として嫌う、同質的な企業風土がある。

 ビジネスパーソンの側からも、日本的な労働雇用習慣の殻から抜け出せない状況がある。

 副業の動向に詳しい法政大大学院の石山恒貴教授は、「他の同僚が残業しているのに、自分は別の場所で副業をしている」ことに負い目を感じる人のことを「隠れキリシタン」と呼んでいる。また、社会的な課題に意欲的に取り組んでいながら、それを終えて自分の会社に戻ると、そのときの熱意を忘れてしまう人がおり、これを「風化」と表現している。副業に対するネガティブな印象が払拭されるには、もう少し時間がかかりそうだ。

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