【リヤド=沢田大典】中東を訪問中の安倍晋三首相は12日(日本時間同)、サウジアラビア政府要人と相次いで意見交換した。首相は、対立する米国、イラン双方の首脳と対話ができる特別な立場を生かし、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に貢献したい考えだ。ただ、現状では外交努力が実を結んでいるとはいいがたく、正念場が続く。
首相は、サルマン国王やムハンマド皇太子との会談に先駆け、アブドルアジズ・エネルギー相とも面会し、原油などのエネルギーの安定供給に向け協力していくことを確認した。
首相が今回の中東歴訪にこだわったのは、日本のエネルギー安全保障上、事態を看過する選択肢はなかったからだ。首相は12日放送のNHK番組で「日本のエネルギーの多くはこの地域を通っており、日本経済にとって死活的に重要だ」と意義を強調した。
訪問先であるサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンの3カ国は、特にその色彩が濃い。日本は原油輸入量の9割近くを中東に依存するが、輸入量1位のサウジと2位のUAEだけで総量の6割を超える。オマーンは、原油を運ぶ航路であるホルムズ海峡を領海として持っている。
日本政府関係者は、昨年6月、首相が日本の首相として約41年ぶりにイランを訪問し、最高指導者のハメネイ師らと会談したことを踏まえ「イランに行った後に、地域の大国であるサウジを訪問することに意味がある」と語った。
ただ、中東情勢を外交努力によって改善させるのは容易ではない。
首相は昨年、イラン訪問に続き、9月には米ニューヨークでトランプ大統領と会談。トランプ氏からイランとの対話を続けるよう求められた。
しかし、米国は今月、イラン革命防衛隊の司令官を殺害し、イランが報復としてイラク国内の米軍施設にミサイル攻撃を行い、情勢は一気に緊迫化した。
中国とロシアがイランを支持していることも問題を複雑化させている。米・イラン双方が軍事的衝突は望まない姿勢をみせ小康状態となったが、依然として偶発的な危機はゼロとはいえず緊張状態は続いている。
外務省幹部は「成果は目に見える形では出ていないが、何もしないのは違う。平和的な着地点を目指し続け、言うべきことがあれば言い続けていくのが外交だ」と語った。