米中改善、年後半の景気回復へ期待 慎重姿勢も さくらリポート


 日銀が公表した1月の地域経済報告では海外経済の減速を主因に生産の悪化が目立った。だが、最大の懸念である米中貿易協議での第1段階の合意で、海外経済の下振れリスクが改善するとも期待されている。消費税増税で減退が心配された個人消費も底堅く、今夏の東京五輪の需要拡大が後押しすれば、日銀が期待する年内の景気回復シナリオも現実味を帯びる。

 「米中の貿易協議の部分的な合意という明るい動きも出ている。グローバル販売が回復に向かうことを期待している」(東北の非鉄金属)。リポートでは米中貿易協議進展による需要回復を期待する声が散見された。海外経済停滞で減産を迫られた製造業の苦境の声も相次いだが、反転の兆しも感じとられている形だ。

 昨年末以降、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題に改善がみられ、年始に高まった米国とイランの緊張も急速な悪化はひとまず避けられた。足元の日米株の上昇基調について「海外経済の下振れリスク改善の証左」(日銀幹部)と見る関係者も多い。

 リポートでは、消費税増税後の個人消費の底堅さも印象付けた。「百貨店での初売りが好調」(日銀大阪支店の山田泰弘支店長)、「年明けは需要が喚起され、徐々に受注が増えることを期待している」(北陸の自動車販売)と、足元では増税後も高額商材の販売が伸びたとの声もある。

 雇用や所得、設備投資の堅調さに加え、海外経済の減速と増税後の個人消費減退といった大きな懸念材料にわずかの光明が差し込んだことで、景気回復を期待する向きは強まっている。

 とはいえ、国内では「受注環境がすぐに好転するわけではない」(東北の生産用機械)と慎重姿勢の企業も多い。少子高齢化に伴う深刻な人手不足で、拡大する受注機会をとらえきれない不安も付きまとう。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は15日の支店長会議で「当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的」との見方を改めて示した。株価や為替は安定しており、20、21日の金融政策決定会合で政策を据え置く見通しだ。(西村利也)



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