中国・武漢市で発症が相次いでいたウイルス性の新型肺炎の感染者が16日、日本国内で初めて確認された。人から人への感染疑いが強まったが、厚生労働省は感染拡大のリスクは低いとして、冷静な対応を呼びかけている。一方で入国時に発熱症状があったにも関わらず、検疫を通過していたことが発覚。今月下旬に中国の春節(旧正月)が迫り、日本を訪問する旅行者らの増加が想定される中、水際対策の課題も浮かび上がった。
■解熱剤服用…サーモに引っかからず
中国で患者の発症が確認された昨年12月以降、厚労省は国内の検疫体制を強化。今月7日には武漢市からの入国者に対し、発熱やせきなどの症状がある場合は自己申告するよう求める掲示を空港などで開始。平時から行っているサーモグラフィーを用いた発熱確認なども継続してきた。
だが、新型肺炎の感染が確認された神奈川県在住の男性は6日に武漢市から帰国しており、注意喚起は後手に回った形だ。しかも男性は帰国時に解熱剤を飲んでおり、サーモグラフィーに引っかからなかったことも判明した。
■2つ目の医療機関で感染確認
一方、国は東京五輪・パラリンピックを見据え、特定の感染症と直ちに診断がつかないような疾患(疑似症例)について、医療機関に届け出を求めており、今回も男性が受診した医療機関からの情報提供が感染確認につながった。
男性は帰国後、最初の検査では感染を否定されたものの、熱が続いたため別の医療機関を再び受診。2度目の検査で感染が確認され、患者の報告に至った。厚労省は今後、どの程度の症例を報告してもらうべきか専門家の意見を聞きながら決める方針を示した。
■「今のところ感染力は高くない」
気がかかりなのは、今後の感染拡大の有無だ。厚労省は、男性の同居家族には感染の可能性を否定できないとして、経過観察と発熱時の自己申告を要請。「それ以外の人は感染のリスクが極めて低いと考えている」(担当者)として、現時点では現状の検疫体制を維持していくという。
東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「コロナウイルスはせきなどを通じて飛沫(ひまつ)感染しやすい。人から人への感染が起きてもおかしくないが、今のところ感染力は高くはないとみられる」と指摘。「過度に心配することなく、外出後の手洗いの徹底、人混みに行くときはマスクを着用するなどインフルエンザ対策と同様の衛生管理に努めてもらいたい」と話している。