相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖(さとし)被告(29)の裁判員裁判の第5回公判が17日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。当日は検察側が証人尋問を行い、事件当時、植松被告と交際していた女性と、同園近くに住む男性の2人が出廷。事件に至るまでの植松被告の言動の変化や、犯行直前の様子などを証言した。
証人として出廷した元交際相手の女性は、植松被告の性格について「楽観的な場面があったが自分の意見を曲げず、自分勝手で目立ちたがりの部分もあった」と話した。女性は植松被告と26年8月ごろから、同年冬まで交際。いったん別れたが、その後、翌年冬から事件当時まで再び交際していた。
女性によると、最初の交際期間中に、植松被告が障害者を差別する言動をすることはなく、車で同園の近くを通ったときも、入所者のことを「あの人はかわいい」などと、楽しそうに語っていたという。
しかし、翌年、再び交際したときには、「生産性がない」「あいつら人間じゃない」「俺がやる」などと言うようになり、障害者の殺害をほのめかす過激な発言が目立つようになった。女性は植松被告の変化について、「(障害者に)一生懸命に接していても報われなかったり、金銭的な対価も低いことなどが、フラストレーションとしてたまっていたのかもしれない」などと推測した。
植松被告は事件前の28年2月から措置入院したが、退院後も障害者に否定的な言動を続けたという。措置入院解除の理由を、植松被告は女性に「おとなしい患者を演じて、医者をだました」と説明したこともあった。
女性は植松被告に、障害者への差別的な言動をやめるように諭したこともあったが、植松被告は「お前、まじで言ってんの?」などと取り合わなかった。また、「自分が先駆者になる」「みんなが賛同してくれるから、刑務所に入ってもすぐに出てこられる」とも語っていたという。
ぬいぐるみが主人公に設定された映画の中で、「(ぬいぐるみでも)自己を認識できたり、他者とのコミュニケーションがとれる場合は、人権が認められる」という内容の場面を見た植松被告が、「俺の言いたかったのはこれだ」と、女性に興奮気味に話すこともあったという。
事件の2カ月ほど前、女性は、植松被告が自身の願望などをつづった紙を見たことがあった。その紙は「新日本秩序」と題され、大麻の合法化▽服役している人の労働義務化▽障害者の安楽死▽見た目が悪い人の厳罰化-といった内容が書かれていた。
2人目の証人として、事件当日、植松被告が園の近くに車を止めた際、その付近の住宅に住んでいた男性が証言台に立った。
当日の深夜、男性は防犯カメラで、植松被告の車が自宅前に止まったのを確認した。植松被告がバンパーを修理するような行動をしていたことから、男性は外に出て「大丈夫ですか」と声をかけると、植松被告は「大丈夫です。やまゆり園の人間です」と答えた。
その後、植松被告は園の方向に立ち去り、男性も家に戻った。しばらくすると、車が発進する大きな音が聞こえてきた。車があった場所を確認すると血痕が落ちており、園の方向にある交差点には、100本近い数の結束バンドが落ちていたという。男性は植松被告と会話した際、薬物を使用している様子はなかったといい、「普通の会話だったと思う」と証言した。