「デザイン経営」を実践 まずは台湾で力だめし

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 大阪府八尾市で優れた技術を生かした自社ブランドを作り、世界に販路を広げようと始動した「YAOYA PROJECT(ヤオヤ・プロジェクト)」。海外メーカーとの競合による業績不振や後継者不在などの悩みを抱える中小企業が、経営にデザインを取り入れることで、飛躍のチャンスにしようとする試みだ。事業継承などの経営課題は全国共通。ヤオヤ・プロジェクトは日本のものづくり再生のヒントとなるか-。   (北村博子)

市場を徹底分析

 これまで大手メーカーなどの下請けを担っていた八尾市内の製造業8社が、ヤオヤ・プロジェクトを通じて外部デザイナーの力を借りながら自社ブランド商品を作ろうと挑んでいる。経営課題に悩む規模の小さい事業所でも、消費者のニーズをしっかり捉えれば、ビジネスのチャンスはまだあるはず。プロジェクトが挑戦するために選んだ最初の舞台は台湾だ。日本の文化やデザインが広く受け入れられ、文化的にも地理的にも近い距離感で、初挑戦しやすい条件が整っていた。


「デザイン経営」を実践 まずは台湾で力だめし
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 昨年11月、プロジェクトに参加する8企業の代表者とデザイナー、八尾市の担当者ら総勢25人は2泊3日の行程で台湾に向かい、市場調査を行った。

 訪ねた台北市にはファミリーマートやモスバーガー、ユニクロなど日本のブランドの看板が目立つ。「日本ブランドの価値は高い」と参加者らは実感した。一行は伝統文化や生活スタイル、気候などあらゆる観点から台湾の消費ニーズを検証。夜市や店舗のほか、一般家庭の住宅も見て回ったという。

 参加企業は2月に台湾で開く展示会で新商品を発表する予定。希望すれば台湾の大手通販サイト「uDesign(ユー・デザイン)」で販売できる。ユー・デザインの本社を訪れ説明を受けた蚊帳生地を扱う「ホトトギス」(八尾市跡部(あとべ)本町)の盛(もり)利和社長(45)は台湾側の受け入れ態勢が整っていると感じた。「ものづくりには自信があったが、それを実際に販売するとなると営業が難しいと感じていたため、少し不安が払拭された」と話す。

 台湾現地調査の最終日には、調査発表会が開かれ、スチール家具メーカー「ルネセイコウ」(同市弓削町南)は、古い工場の建物に付属するサビついた水道管やガス管などから受けたインスピレーションを「商品へ生かしたい」と説明した。また、金属加工の「赤坂金型彫刻所」(同市楠根町)も台湾の文化である窓の鉄格子の模様などが開発のヒントになりそうだと発表した。


「ヤオヤ・プロジェクト」の台湾現地調査で最終日に行った調査発表会。経営者やデザイナーが熱心にレポートを行った(八尾市提供)
「ヤオヤ・プロジェクト」の台湾現地調査で最終日に行った調査発表会。経営者やデザイナーが熱心にレポートを行った(八尾市提供)
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経営課題は全国共通

 経産省が昨年2月に発表した平成29年6月現在の工業統計速報のデータによると、大阪府内の事業所数は1万5990と全国で最多。中でも、八尾市は金属製品や機械器具、プラスチック製品の製造を中心に1320もの事業所があり、府下で4番目に多い。

 一方で3年の5033をピークに減少傾向が続いており、30年ほどの間に3分の1以下に激減している。同市が25年度に実施した製造業実態調査では、多くの企業が経営課題として「営業力・ブランド力」「製品開発力・企画力」を挙げており、市はてこ入れのため企業の新商品開発にプロダクトデザイナーのアドバイスを取り入れる事業を27年度から展開していた。ただ、企業に自社製品の開発を継続しようという意識が根付かなかったため、デザイナーと企業がより密接にコミュニケーションを図り、新商品を共同開発するヤオヤ・プロジェクトを令和元年度にスタートさせたという。

 新商品を生み出した後、海外販売を実現するまでのハードルとして、次は特許申請や商標登録に関わる手続きの煩雑さが待ち受ける。類似品などに備えるリスクマネジメントも必要。プロジェクトでは大阪発明協会(大阪市北区)による説明会を開くなどのフォローを続けている。


台湾で行った現地市場調査では、街中にあふれる建物の外観や店の看板、台湾らしい色や形なども調査の対象になった(八尾市提供)
台湾で行った現地市場調査では、街中にあふれる建物の外観や店の看板、台湾らしい色や形なども調査の対象になった(八尾市提供)
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日本のものづくりを変える

 ヤオヤ・プロジェクトは、自社ブランドを立ち上げようと奮闘する中小企業の物語だが、新商品を作るために企業の技術を調べ尽くし、どのように消費者に届けるべきなのか考え抜いた協力デザイナーらのための物語でもある。

 ゴム加工「錦城護謨(きんじょうごむ)」(同市跡部北の町)のパートナーとなったデザイン会社「シーラカンス食堂」代表、デザイナーの小林新也さん(32)は「今の日本では見た目のデザインやプロデュース力はもちろん、幅広い視点を持ったデザイナーが求められている」と話す。社会や消費者のニーズをしっかり把握し、企業の経営者とビジョンや戦略を共有することができるような人材の必要性を指摘しているのだ。こういったデザイナーが多く育てば、経営課題に悩む規模の小さい事業所を支援できる機会も増えるだろう。

 八尾市に協力して、ヤオヤ・プロジェクトのコンセプトを決めてきたデザイン会社「ロフトワーク」(京都市下京区)のプロデューサー小島和人さん(37)は「新しいニーズを生み出す商品開発のプロセスを、デザイナーと企業が共に作り出すヤオヤ・プロジェクトをモデルにした取り組みが全国的に広まれば、日本のものづくりはきっと変わるだろう」と話している。

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