2月11日に真打ち昇進と同時に六代目神田伯山(かんだ・はくざん)を襲名する講談師、神田松之丞(まつのじょう)(36)の快進撃が止まらない。「いま最もチケットが取りにくい講談師」と称され、東京・東池袋の「あうるすぽっと」で1月に2回に渡って行われた連続読み「畔倉重四郎(あぜくらじゅうしろう)」の5日間通し前売り券も即時完売。満席の会場は、熱気に包まれていた。
「あうるすぽっと」の劇場支配人、蓮池奈緒子さんは松之丞の舞台について「一般的な“演劇”とは全く異なり、また一人芝居とも違う舞台に魅了されている。情景が次々と浮かび、かつ登場人物の生きようも見える」と語る。
釈台を張り扇でパンパンとたたきながら、話術によって物語をリアルに紡いでいく講談。明治時代に全盛期を迎えたが、テレビなどの普及で昭和30年代以降、低迷。現在、講談師は東西合わせて90人ほどというが、松之丞の活躍により、講談がここ数年、盛り上がりをみせている。
松之丞は大学卒業後の平成19年、講談師で人間国宝の三代目神田松鯉(しょうり)に入門。松之丞が襲名する「神田伯山」は講談界の大名跡で、五代目伯山が死去した昭和51年以降、空席のままになっていた。
昨年12月に行われた昇進披露取材会で、松之丞は「講談師にとって神様、憧れの名前だが、世間の方には松之丞の方が通りがいいと思う。44年も途絶えていた伯山のストーリーを取り戻す責任がある」と語った。(水沼啓子)