【カイロ=佐藤貴生】イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)は27日、報道官のものとみられる音声メッセージをネット上に公開し、トランプ米政権が28日に公表する中東和平案の実現を阻止するよう支持者らに呼びかけた。また、「新たな段階」としてイスラエルとユダヤ人を標的にすると宣言した。
イスラエルのメディアなどが伝えた。メッセージは、昨年10月に指導者のアブバクル・バグダディ容疑者が米軍の急襲で死亡したことを受け、「欧米はISは消滅したと考えているかもしれないが、私たちはなおもここにいる」と強調した。
その上で、イスラエルの隣国エジプトやシリアのIS戦闘員に対し、ユダヤ人社会や市場などに越境攻撃を行うよう要求。ヨルダン川西岸地区などイスラエル占領地の奪還も求めた。
また、米政権の中東和平案の実現を阻むとしたほか、「私たちの目はエルサレムを見つめている」とも述べ、攻撃を強化する姿勢を示した。イスラム教やユダヤ教の聖地があるエルサレムはイスラエルが実効支配している。
ISはこれまで、パレスチナ問題では目立った動きを示していなかった。バグダディ容疑者死亡で弱体化した求心力を取り戻すため、イスラム教徒の共感が得やすいパレスチナ問題に焦点を当てる狙いもうかがえる。