春闘、「一律引き上げ」から「最低賃金底上げ」も 自動車中心に主要製造業





春闘について記者会見する全トヨタ労連の鶴岡光行会長=10日、愛知県豊田市

 令和2年春闘をめぐり、自動車をはじめとした製造系の産業別労働組合が、企業・業界内の最低賃金の引き上げを共闘軸としている。春闘方針の見直しが進む背景には、長年の運動で基本としてきた「ベースアップ」(ベア)だけでは、非正規雇用なども含めたすべての労働者の賃金引き上げにつながっていないという労組側の反省がある。(今村義丈)

 「例年以上に取り組みを強化する。労組が組織されていない企業や非正規労働者も含め、すべての働く人々に底上げを波及させようということだ」

 ホンダグループの労組で構成する全国本田労働組合連合会の関係者は、16日の中央委員会で決定した春闘方針に、高卒初任給にあたる「企業内最低賃金」の労使協定化推進の文言を盛り込んだ意味を解説する。

 日産労連は昨年まで16万円としていた企業内最低賃金の統一要求額を、上部団体の自動車総連方針に合わせ「16万4千円」に引き上げることを決定。「日産グループは業界内では中小の割合が高く、最低賃金協定未締結の組合も多いため、いっそう取り組む必要がある」と関係者は語る。

 全トヨタ労連も「16万4千円以上」を統一水準とすることを決めており、これで自動車大手3労連すべてが最低賃金引き上げを主要要求に掲げたことになる。

 自動車総連は今年初めて、春闘方針で「18歳で月額16万4千円以上」での企業内最低賃金労使協定化を盛り込んだ。法定最低賃金が時給1千円を超えつつある上昇傾向のなか、従業員の月給がこの水準を下回ってきたケースもあるためだ。

 労組側の狙いは、各企業内の最低賃金が上がることで、「自動車業界の人材確保につながり、業界内の働く仲間全体賃金の底支えにもなる」(高倉明自動車総連会長)ことだ。企業内最低賃金と連動して、産業ごとに地域別最低賃金より高い水準で設定されている「特定最低賃金」について、経営側が廃止論を主張していることへの危機感や反発もある。

 主要製造業の5つの産業別労組が加盟する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)が21日に東京都内で開いた会合では、自動車総連だけでなく電機連合などすべての産別が、最低賃金引き上げに向けた検討を行っていると明らかにしており、今後も見直しの動きは広まりそうだ。



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