新型コロナウイルスの感染をめぐる主要野党の対応がひどい。奈良県の日本人男性への感染が28日夕に明らかになり、人から人へ感染した可能性が濃厚になった時点で、局面は変わった。国を挙げて対策を講じなければならない緊急事態に、政府への協力姿勢が希薄なのはどうしたことか。
そもそもこの男性の感染が発覚して以降、立憲民主党の枝野幸男代表が公式な場で新型肺炎について発信した形跡はない。安住淳国対委員長は29日、記者団に「政府の対応が非常に遅れている」と批判した。
野党は同日、新型肺炎に関する「合同ヒアリング」も開き、厚生労働省の担当者らを呼びつけ、質問攻めにした。中国・武漢市を含む湖北省在留の邦人が帰国した当日だが、立民幹部は「きょう(29日に)やるのが大事なんだ」と漏らした。この期に至っても、パフォーマンスを先行させる感覚には閉口する。
国民民主党の玉木雄一郎代表は30日、菅義偉(すが・よしひで)官房長官に、感染症法に基づく「指定感染症」とする政令の施行前倒しなどを申し入れた。提案をした点で立民よりましだが、国会運営などで弾力的な対応を申し出たような痕跡は乏しい。
東日本大震災が平成23年3月に発生した際、野党だった自民党の谷垣禎一総裁(当時)は「協力を惜しむつもりはない」と全面協力を表明した。自公両党は「政治休戦」まで求めた。
政府は30日正午、新型コロナウイルス感染症対策本部を開いたが、開催時間はわずか10分。午後1時から参院予算委があったためとみられるが、予算委では首相主催の「桜を見る会」などの追及ばかり目立つ。野党は公党として存在が問われている。(坂井広志)