奈良ホテル(奈良市高畑町)のダイニングルームや客室に100年以上飾られてきた天鵞絨友禅(ビロードゆうぜん)などを紹介する収蔵絵画展「Be Road~天鵞絨友禅と奈良ホテル110年の軌跡~」が3日、同ホテル新館・若草の間で始まった。8日まで。
天鵞絨友禅は、なめらかで光沢のある天鵞絨に染色技術の友禅を施すことで、絵画とは違う風合いを醸す美術染織品。京友禅の老舗「千總(ちそう)」(京都市)の12代西村總左衛門が明治時代に創案したとされる。
奈良ホテルには明治末期~大正初期の製作とみられる十数点の天鵞絨友禅作品が存在することが、平成29年に同志社大の清瀬みさを教授による調査で判明していた。
天鵞絨友禅は1900(明治33)年のパリ万国博覧会に出品され、明治後期から大正にかけて人気を博した。明治42年に開業した奈良ホテルは関西の迎賓館と呼ばれ、外国からの賓客を意識した室内装飾として購入したとみられる。
千總文化研究所の加藤結理子所長は「当時の天鵞絨友禅作品は宮内庁などが収蔵するが、現役の室内装飾として使用されているのは極めて珍しい」と説明。収蔵絵画展では「雉(きじ)」や「竜田紅葉」など天鵞絨友禅の作品8点のほか、横山大観ら日本画の巨匠が描いた6点も展示している。