【カイロ=佐藤貴生】シリアの反体制派武装勢力が最後の拠点とする北西部イドリブ県で3日、アサド政権側による砲撃でトルコ軍兵士ら8人が死亡した。トルコ軍は報復の軍事作戦を行い、シリア人権監視団(英国)によると政権側兵士13人が死亡。トルコのエルドアン大統領は、イドリブ情勢が「収拾不能」になったとして、作戦継続の意向を示した。
トルコは2018年、アサド政権の後ろ盾であるロシアとの間でイドリブに非武装地帯を設けることで合意し、監視任務などのために部隊を駐留させている。
今回の砲撃についてロシアは、トルコ部隊が移動することを事前に通告しなかったために起きたことだと説明。トルコ側は否定しており、双方の主張が対立している。トルコ軍は報復の際にF16戦闘機も投入したという。シリア国営メディアは、政権側に犠牲者はいなかったとしている。
トルコはロシアとの合意に基づき、イドリブの武装勢力に兵器を撤去させるとしてきたが、進展はしていない。そんな中でアサド政権側とロシア軍はイドリブへの攻撃を強化し、国連によると昨年12月以降だけで約50万人が避難している。
衝突を受けてトルコのメディアは、トルコ軍がロシアとともにシリア北部の国境地帯で実施してきた合同パトロールが3日は中断されたと伝えた。両国は昨年10月、トルコが敵視する少数民族クルド人の民兵組織を国境周辺から撤収させ、合同で国境監視に当たることでも合意していた。