北朝鮮による拉致被害者、有本恵子さん(60)=拉致当時(23)=の母、嘉代子さん(94)が3日に心不全で亡くなったことを受け、夫の明弘さん(91)が6日、神戸市内で取材に応じ、「言葉が出えへん」と涙を拭った。
親族によると、心臓病を患っていた嘉代子さんは5年ほど前から入退院を繰り返していた。今年は神戸市長田区の自宅で家族らと新年を祝ったが、1月3日に体を動かした際に骨折して入院していた。
今月3日の朝までは看護師らと会話を交わしていたが、昼ごろに容体が急変。明弘さんらが駆けつけた際にはすでに意識を失った状態で、同日午後3時すぎに息を引き取った。
行方不明から5年後の1988年9月、恵子さんが北朝鮮で暮らしていることが判明。その後30年以上にわたり、娘の帰国を願って明弘さんと2人で政府などに救出を訴え続けた。昨年6月、米トランプ大統領から解決への尽力を誓う手紙が届いた際には、体調を気遣う明弘さんの隣で「大丈夫、少しだけ」と笑顔を見せ、「手紙をもらったときに夫は泣いて喜んだんですよ」と、自宅で記者の取材に応じた。
嘉代子さんの葬儀は同市内で6日に親族のみで営まれた。明弘さんは「涙は出るけど言葉が出ない。そういう心境や」と繰り返した。