「日露に本質的差異、領土交渉は困難」 モスクワ国際関係大学部長・ストレリツォフ氏





モスクワ国際関係大のストレリツォフ東洋学部長(小野田雄一撮影)

 安倍晋三首相が意欲を見せるロシアとの北方領土交渉について、モスクワ国際関係大のドミトリー・ストレリツォフ東洋学部長がインタビューに応じた。安倍首相はプーチン露大統領の招待に応じ、5月9日にモスクワで予定される第二次大戦の対ドイツ戦勝75年式典に出席して首脳会談を行う方向だ。ストレリツォフ氏はしかし、大戦をめぐる日露の認識には「根本的差異」があり、交渉の進展は難しいと話す。発言要旨は次の通り。(モスクワ 小野田雄一)

 日本とロシアの平和条約交渉で明白な進展が見られないのは、平和条約を締結する目的が両国で本質的に異なっているためだ。

 日本にとって「北方領土問題」は国家の威信に関わる課題であり、その解決は、軍国主義の負の遺産を克服して“普通の国”の地位を取り戻すことと結びついている。一方のロシアは、自身のアイデンティティーを(第二次世界大戦の)戦勝国という偉大さの中に見いだそうとしている。だからこそロシアは、南クリール諸島(北方領土のロシア側呼称)の帰属の移転を含めた第二次大戦の結果を無条件で承認するよう日本に求めているのだ。

 日本にとっての重要なことが第二次大戦中に失ったものを取り戻すことであるならば、ロシアにとってのそれは(第二次大戦の結果を)法的に基礎付けることだ。まさにこのことにより、プーチン氏の「無条件で平和条約を結び、国境画定の問題はその後で解決しよう」という提案を説明することができる。

 ロシアは「平和条約締結後にソ連は歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡す」と定めた1956年の日ソ共同宣言により、第二次大戦に関して未解決だった問題は解決されたと考えている。

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