【小菅優 音楽と、夢に向かって】「蜜蜂と遠雷」懐かしい気持ちに


 映画化もされ、話題となった恩田陸(おんだ・りく)さんの小説「蜜蜂と遠雷」を読みました。ピアノのコンクールを舞台に、4人のピアニストの青春を描く小説ですが、同業者として読んでも新鮮で面白く、懐かしい気持ちになりました。

 コンクールという枠を超え、主要なキャラクターそれぞれに音楽へのこの上ない愛があることが、読んでいて何よりうれしく、また、音楽への想像力あふれる描写と、こんなピアニストたちがいたらいいなと思えるような個性的で温かいキャラクターたちに共感しました。

 音楽家のキャリアにはさまざまな築き上げ方がありますが、コンクールで上位入賞することをきっかけに公演活動を始めることが多いかと思います。

 私は幼少時以外はコンクールに全く出場しませんでしたが、録音音源の発売によって演奏を聴いていただくチャンスがあったり、一つ一つの公演を精いっぱい頑張って徐々に公演を増やすのがわが道でした。

 音楽という最も人間的かつ、演奏者一人一人の個性や表現力が異なるものを、同じく感性豊かな人間が評価する…。コンクールといっても音楽の場合、単なる競争と採点は異なっている、難しいプロセスなのではないかと思います。

 コンクールは、たくさんの若いアーティストたちが世の中に聴いてもらうチャンスの場でありながら、きっと感動や発見もあるのでしょう。

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