出資法違反容疑で18日に警視庁に逮捕された鏑木秀弥容疑者が代表を務めた「ケフィア事業振興会」。高齢者を中心に3万人を超える消費者被害を出したその手口からは、巧妙に信用を演出し、内実の乏しいビジネスを展開した「虚業」の姿が浮かび上がる。
鏑木容疑者は昭和60年からヨーグルト種菌の通信販売を手掛け、その法人を母体にケフィアを創業。グループ会社を立ち上げ、干し柿やメープルシロップなど販売品目を増やして顧客を開拓していき、平成23年4月ごろからオーナー商法を展開するようになった。
標的にされたのは、主に高齢者だった。通販の利用者にダイレクトメール(DM)を送り付け、加工食品のオーナーに勧誘。周囲を誘った出資者も多かった。太陽光発電や海外のホテル開発などの事業も打ち出して新たなオーナーを募っていったが、「それらの多くは収益化に乏しい内容だった」(捜査関係者)。
25年に約65億円だった同社の売上高は、わずか4年後の29年に15倍の1千億円を突破。しかし、実態は売り上げのほとんどがオーナー契約による預かり金だったとみられる。29年11月ごろには配当の遅れが目立ち始めており、自転車操業状態だった可能性が高い。
しかし、顧客に対しては「コンピューターのシステム変更のため」などと虚偽の説明を行い、出資を募り続けた。大口の出資者の一部を有名なサーカスや歌舞伎の公演に招待して安心感を与えるほか、通常よりも有利な出資条件を提示して元本償還の先延ばしを図るなど、内実を巧妙に覆い隠していた。
捜査関係者は「オーナー商法を展開する以前の通販事業で築いた信頼感を悪用し、長期にわたり実際に配当を行うことで顧客を安心させていた」と指摘する。