中部電力は17日、地域住民の個人情報を預かり地元企業に提供する「情報銀行」の実証を3月上旬から始めると発表した。地域振興につなげるほか、電力、ガス事業が人口減少で需要が頭打ちのなか、新たな収益源に育て上げたい考え。「情報銀行」は日本発のビジネスモデルで、大手銀行などが相次いで参入を表明している。「GAFA」と呼ばれる米アップルなどの巨大IT企業が膨大な個人情報を握る現状に対抗する動きと位置づけられている。
中部電の実証は、愛知県豊田市在住や豊田市に出かける住民を対象に、同意を得た上で年齢、性別、行動履歴、予定などを書き込んでもらい、同市内の約50の店や約25の公共施設の買い物情報やクーポン、イベント情報が受け取れる仕組み。今回は店や公共施設に提供する住民データは無料だが、将来、有料化を検討している。中部電は、電柱にカメラをつけて子供の動きを把握できる見守りサービスなども展開しており、今回の情報銀行も含め、電力以外の分野の展開を拡大していく。
情報銀行は電通のグループ企業が昨年7月に参入済みで、今春の銀行法改正後に、三菱UFJ信託銀行、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資する「ジェイスコア」が参入する予定となっており、今後、差別化が重要になる。ただ、個人情報の適切な管理と、企業が対価を払ってでも手に入れたいと思うだけの情報の価値を両立できるかが課題となっている。