反省が必要なのは被告ばかりではない。ゆがんだ行政のあり方を、政府も改めて猛省しなければならない。
学校法人「森友学園」の小学校建設などをめぐる補助金詐欺事件で、大阪地裁は前理事長、籠池泰典被告に懲役5年の実刑判決を言い渡した。妻の諄子被告は懲役3年、執行猶予5年とした。
泰典被告は初公判で、「国策捜査」などと検察を批判した。1審とはいえ裁判所が認めたのは、両被告が人をだまし、詐欺を働いたということである。自らの行為の意味をかみしめるべきである。
そのような被告に付け入られ、振り回されて国政を混乱させたのは、安倍晋三首相周辺であり財務省だ。その責任の重さを痛感してし過ぎるということはない。
開校予定の小学校の名誉校長に安倍首相の妻、昭恵夫人が就いていた。学園が取得した国有地は8億円以上も値引きされていた。
平成29年に問題が明らかになってからの狂騒は、国民への背信と言っても過言ではない。
官僚が忖度(そんたく)したのではないかと追及する野党に、財務省理財局長だった佐川宣寿氏は国会で「記録は廃棄した」と述べた。しかし大量に改竄(かいざん)された文書が後になって表に出てきた。
虚偽公文書作成罪などで告発された佐川氏は不起訴となった。なぜ文書の改竄がなされたか、そもそもなぜ国有地が大幅に値引きされたか、十分な説明がなされたとはいえない。
公文書管理のあり方は、「桜を見る会」をめぐっても問われている。政府に厳粛に襟を正す意識がなければ、政治への信頼は再び損なわれよう。
野党も野党である。国会に泰典被告を呼ぶことを強く求め、問題を政権追及の具にしてきた。その人間が詐欺を働いていたことを今回、司法は認めたのである。
29年には安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」でも野党は忖度を問題とし、水掛け論となった。「モリ・カケ」と揶揄(やゆ)されるほど国会は2つの学園騒動でほぼ一色だった。北朝鮮が度重なる弾道ミサイル発射などの挑発に出ていたときである。国政の優先課題をそっちのけにした騒ぎにうんざりした国民も多い。
現在も新型肺炎の脅威が日ごとに高まっている。政府与党、野党とも本分を自覚すべきである。