重なった行政の不手際「救える命」救えず 千葉・野田小4虐待死





栗原勇一郎被告(フェイスブックから)

 千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が昨年1月に自宅浴室で死亡した虐待事件では、県柏児童相談所や野田市など行政機関の対応に不手際が相次いだ。事件を検証した県検証委員会の報告書は「何としても守られるべきだったし、救える命であった」と強調した。

 事件をめぐっては、平成29年11月、学校アンケートで父の勇一郎被告(42)=傷害致死罪などで公判中=からの暴力を訴え、柏児相に一時保護された心愛さんは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の状態と診断された。しかし、柏児相は援助の方向性を決めるために必要な会議を開催せず、祖父母宅での生活などを条件とした同12月27日の一時保護解除決定時の判断も明確ではなかった。

 報告書は「担当者レベルで援助の方向が決められていたと思われる」と問題点を挙げる。

 さらに30年2月26日、祖父母宅で被告が、心愛さんが書いたとする暴力を否定する手紙を提示した際の対応にも大きな問題があったと指摘。被告が「法的根拠がないなら自宅に連れて帰る」と発言した後、柏児相は再度の一時保護などの対応をとらず、被告の行動を事実上追認したことを「手紙を書かせること自体、著しく支配的であり、心理的虐待と捉えるべきだ」と厳しく批判した。

 柏児相は同年3月19日、心愛さんから被告の指示で手紙を書かされていたことを聞き取りながら、被告と再び同居するようになった心愛さんに特段対応をとらなかった。昨年1月、冬休みが明けても登校せず、被告から「1月いっぱい休ませる」と連絡があっても、柏児相や学校は家庭訪問しなかった。

 野田市も市教育委員会の担当者が学校アンケートの写しを、訴訟をちらつかせる被告に要求されるまま渡すなどの不手際があった。

 報告書は「漫然と推移した末に痛ましい結果を招いた」と批判。関係機関による児童虐待専門部署の設置や研修の充実による再発防止を求めた。



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