国内の人材不足が加速する中、国籍を問わずしっかりと実績を上げれば役職につけるなど外国人人材の積極登用で業績を伸ばし、全国の経営者から注目される企業がある。経営のかじを取るのは磐田市で自動車用シート表皮の縫製加工などを行う平野ビニール工業社長の平野利直さん(43)。社是でもある“多文化共生”の深化を目指し、平野さんの挑戦が続く。(那須慎一)
--御社の足元の事業でどのような点に注力しているか
「主にスズキの軽自動車『スぺーシア』や『クロスビー』『イグニス』などのシートの裁断や縫製をしています。すべて工業用ミシンを使った手作業にこだわり、品質の高いものづくりを実現しています」
--どのような経緯で経営に携わるようになったか
「私自身、もともとは跡を継ぐつもりはなく、18歳でサッカー留学のためブラジルに渡り、サンパウロFCのメンバーとともにプレーをしました。いったん帰国し、大学卒業後に就職しましたが、再びブラジルで選手でなくともサッカーに関する仕事をしたいと思い、渡航費用をためるために今の会社に入りました。すると、父と取引先に出向く度に『後継者はどうなるの』と心配され、入社半年で社長業を父から引き継ぎました。ブラジルのサッカーチームにいて学んだのは、多文化、多国籍の選手たちがワンチームでプレーする大切さ。この経験は性別や国籍などを問わずに働いてもらう環境を整えることにつながっていると思います」