昨年11月に覚醒剤(かくせいざい)を所持したなどとして覚せい剤取締法違反(所持、使用)の罪などで起訴された元タレントの田代まさし(本名・政)被告(63)。13日に仙台地裁で開かれた初公判では、薬物入手の経緯や反社会的勢力との接点などを生々しく証言した。同法違反容疑による逮捕は平成13年、16年、22年に続き4度目だが、公判からは薬物依存から抜け出せない難しさが改めて浮き彫りになった。(塔野岡剛)
注射器で“ネタ”
「タレントですが、ずっと活動はしていません」
白いシャツに黒のジャケット、黒縁眼鏡で入廷した田代被告は、しっかりとした足取りで自らの席に着いた。裁判長から職業を問われると、視線を落とすことなく答えた。罪状認否で裁判長から起訴内容に間違いないかを問われた際には「いえ、ありません」と素直に認めた。
検察側の冒頭陳述などによると、田代被告は薬物依存者の社会復帰を支援する「日本ダルク」の講演会で聴講者から乾燥大麻を入手。さらに、昨年10月26日に行われたバイク関連のイベントに参加した際、会場のトイレで覚醒剤と注射器を拾い、11月6日未明に東京都内の自宅マンション敷地内で覚醒剤を使用したことが明かされた。
被告人質問で田代被告は覚醒剤を入手した際の経緯を具体的に証言した。
「仮設トイレの個室の一室で、トイレットペーパーが置いてある台に、財布と覚醒剤と注射器が置いてあった」
検察官から「誰のものかわからないものを持ち帰る怖さはなかったか」と問われると、「チャンスと思った」と答えた。
また、被告人質問では、反社会的勢力との接点も明かされた。昨年8月に反社の宴会に出席した際、「耳元で『(薬物が)あるぞ』とささやかれた」「ふざけてハグしたときに、ポケットに薬物を入れられた」として覚醒剤を入手、使用を再開していたことも証言した。
さらに、田代被告は反社との宴会で、注射器を用いた“ネタ”をしていたことも披露。「自虐はウケた」と自嘲気味に語ったが、法廷内は失笑に包まれることもなく、薬物依存から抜け出せない田代被告の悲哀だけが漂っていた。