【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)は2月28日、世界全域について新型コロナウイルスの危険性評価をこれまでの「高い」から最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。感染が世界でさらに広がる危機感が高まる中、地球のほぼ全体に感染が拡大する「パンデミック」(世界的大流行)をWHOが宣言する日は近いとみられている。
「ウイルスの封じ込めは可能だ」
WHOのテドロス事務局長は28日、新型コロナウイルスの危険性を最高レベルに設定しつつも、各国に冷静な対応を呼び掛けた。テドロス氏は現時点で、感染状況について「パンデミックになる可能性がある」との発言にとどめている。パンデミックという言葉を使用して世界をパニックに陥れることを避ける狙いがあるとみられている。
しかし、実際には中国国外での感染拡大が続々と判明しており、28日付のWHOの状況報告によると55カ国・地域の8万3652人が感染している。ウイルス疾患などを研究する米専門家、レッドリーナー氏は同日、「(感染状況は)パンデミックと呼ばれるべきだ」と米CNNテレビに指摘した。
米マイクロソフト創業者で感染症対策支援の慈善事業に取り組むビル・ゲイツ氏も同じ日に発表した論文で、感染拡大をパンデミックとした。感染症対策の英専門家は「WHOもすでにパンデミックであると認識しており、宣言するタイミングを見計らっている段階だ」と分析する。
WHOによると、現在、新型コロナウイルスに対する2つの治療薬の臨床試験とともにワクチンの研究開発が同時進行で行われている。感染拡大がより深刻化する前に、効果的な治療法や予防策が確立されることが求められている。