【台北=田中靖人】新型コロナウイルスへの警戒からマスク不足が続く台湾では、事実上の配給制が取られている。買い占めを防ぐことで不公平感を無くす狙いがある。当局は、在庫のある店舗を表示する携帯電話のアプリの開発も促し、スムーズな流通を図っている。
台湾では2月6日以降、マスク購入が「実名制」となっている。域内で生産されるマスクは全量を当局が買い上げ、約6000軒の指定薬局で、現在は各店舗毎日400枚(大人用)を販売している。大人1人につき1週間で2枚に制限されてきたが、今月5日からは3枚となる。価格は1枚5台湾元(約18円)で、事実上の配給制といえる。
台湾のマスクの9割は中国からの輸入に依存してきた。新型肺炎への警戒感が強まったのは春節(旧正月)の休暇中で、域内の生産量は低下。このため、当局は1月24日からマスクの輸出を禁止するとともに、同28日から備蓄分をコンビニに放出し、1人1日3枚の購入制限をかけた。だが、何店舗も回って買いだめをする市民が出たため、「実名制」に転換した。
市民は保険証番号の偶数と奇数で購入日が分けられる。保険証はICチップ付きで購入履歴が記録されるため、不正はできない。外国人登録証に相当する「居留証」を持つ外国人は購入可能だが、短期滞在の旅行客は事実上、購入できず、販売を台湾居住者に限定する仕組みだ。
また、当局は薬局の即時情報を民間に公開し、店ごとの残量を地図上に表示するアプリの開発を促した。現在20種近くのアプリが運用され、無駄のない購入に一役買っている。