ハラスメント保険多様化 企業の賠償リスク増で需要拡大






 企業に初めてパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が6月に施行されるのを前に、会社がハラスメント行為を理由に従業員からの賠償請求リスクに備える「雇用慣行賠償責任保険」を拡充する動きが広がっている。損害保険各社は多様な嫌がらせ行為や、取引のあるフリーランスが迷惑行為した場合にも対応できるよう保険を改定。人手不足などを背景に雇用トラブルは増加しており、高まる保険ニーズへの対応を急ぐ。

■「コロナハラスメント」

 同保険の補償範囲を広げる背景には、セクハラやパワハラ以外にも妊娠・出産に関するマタニティーハラスメントや言葉や態度で嫌がらせをするモラルハラスメントなどハラスメント行為の多様化が背景にある。最近は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、職場でせきをしただけで感染を疑われて謝罪を求められたり、距離を置かれたりする「コロナハラスメント」も急増しているという。

 こうした状況変化に対応すべく、損害保険ジャパン日本興亜は2月にマタハラやモラハラなどを理由にした従業員の賠償請求にも保険で対応できるようにした。事故発生後の記者会見、おわび文書の作成といったマスコミ対応や弁護士相談などの費用も補償する。

 事業拡大に伴い取引先や関連会社の従業員とのトラブルも増加傾向にあるとされ、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険も昨年10月、子会社の従業員からの賠償請求も補償対象に加えている。

■顧客の長時間クレームにも備え

 従業員からだけでなく、顧客から長時間のクレームなど理不尽な要求をされるカスタマーハラスメントに備える保険の扱いも始まった。東京海上日動火災保険が今年1月に販売した保険は、従業員が顧客や取引先から暴言やストーカーなどの迷惑行為を受けた場合、弁護士やカウンセラーと相談する費用を補償する。

 雇用トラブルが増加する中、雇用慣行賠償責任保険の契約件数も急増し、損保大手では平成30年に前年比1~4割拡大したという。企業のパワハラ対策が義務化され、違反した場合の賠償請求が高額化する可能性も指摘されている。



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