政府は10日発表した新型コロナウイルスの緊急対策第2弾で、中小企業・小規模事業者の資金繰り支援など経済や国民生活の“止血”を急いだ。自粛行動の拡大で日本経済は既に深刻な打撃を受けており、今後は感染終息を見据え追加経済対策を検討する構え。とはいえ、早期に終息のめどをつけ需要回復の切り札である東京五輪を確実に開催するのが最大の景気対策でもあり、感染防止から景気刺激へ政策の重点をいつ切り替えるか判断が問われる。
西村康稔経済再生担当相は10日の記者会見で、新型コロナの感染拡大が日本経済に「相当大きな影響をもたらしてきている」と指摘。緊急対策第2弾の実施後も必要な経済財政政策を実行する考えを強調した。
実際、中国人を含む訪日外国人観光客の落ち込みに加え、外出を自粛した日本人の国内旅行のキャンセルや延期も相次ぎ、宿泊や交通、飲食といった観光関連業種は低迷している。感染源の中国で工場の操業が止まりサプライチェーン(供給網)が混乱したことで、製造業は部品の輸入が滞り生産活動に影響が出た。
民間シンクタンクでは消費税増税や米中貿易摩擦で減速した昨年10~12月期に続き、新型コロナの影響で今年1~3月期も国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥るとの見方が強い。宿泊業や飲食業では既に新型コロナの関連倒産が出ており、東京商工リサーチがまとめた2月の全国企業倒産(負債額1千万円以上)は前年同月比10・7%増の651件と6カ月連続で増加。今年度は11年ぶりに前年水準を上回る見込みだ。
このため既に景気刺激に向けた令和2年度補正予算の編成が待望されている。政府は当面の危機対応が終われば国内外から観光客を呼び込むために官民挙げたキャンペーンを実施し、東京五輪に向け停滞ムードの払拭に努める。地域の特産物の生産者や商店街などへの支援も含めて総合的な対策を打ち出す。
一方、感染が終息せず東京五輪が開催できないような状況になれば、景気の落ち込みも一過性では済まない。訪日客需要を当て込んだ都市開発投資が不良債権化するなど大きな影響が出る恐れがある。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、いまは感染防止を優先し、地球温暖化対策に資する公共投資など終息後に講じる「賢い景気刺激策」の弾込めに専念すべきだと指摘している。