新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業経営者から悲鳴があがっている。政府は10日の緊急対策第2弾で、中小企業・小規模事業者の支援を打ち出したが、国内景気は消費税増税の影響などで昨年末から悪化が鮮明で、多くの企業はダブルパンチを受けている状況だ。中小企業が倒産するケースも出るなか、緊急支援も「『焼け石に水』になりかねない」との声もあがる。
「もう少し早く出すべきだった」
埼玉県内で機械部品を手掛ける中小メーカーの社長は不満を隠さない。昨年10月の消費税増税以降、経営悪化が鮮明になっていた。「12月ごろから徐々に受注が減り、現在は1年前の半分ぐらいに落ちている」と打ち明ける。
神戸市内のアパレルメーカーの担当者は、外出控えによる百貨店販売の落ち込みで、2月の売り上げは4~5割程度下がったという。「この状況が2、3カ月続けば融資を受けても焼け石に水。それよりも感染を食い止めることをしっかりしてほしい」と話す。
訪日客が激減し、国内でも外出控えが広がるなか、神戸市のクルーズ会社や愛知県の老舗旅館が倒産するなど、中小企業が破綻するケースも発生。「感染拡大対策を急いでほしい。政府の対応は後手に回っている」(大阪市内のバルブ製造販売)「資金面での援助がなければ、多くの企業が立ち行かなくなる」(大阪府内の魚料理店チェーン)など、現状の厳しさを訴える声があがる。
日本商工会議所の調査によると、中小企業の約6割超が経営に影響があると回答。日商の三村明夫会頭は「特別貸付制度など、中小企業に対するセーフティーネットを拡充してほしい」と強調した。
中小企業だけでなく、中国に生産・流通拠点を持つ大手メーカーへの影響も広がっている。電子機器大手の担当者は「政府には融資などの一時的な対応だけではなく、日銀と連携した大規模な金融施策を早期に打ち出してほしい」と訴える。
近畿大学の入江啓彰准教授は「資金繰り支援を軸とした今回の対策は、目下の状況への“対症療法”の意味合いが強い。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長となったように、消費増税などの影響で国内景気はすでに下り坂に入っている。政府はすぐさま“二の矢、三の矢”の追加経済対策を打ち出す必要がある」と指摘する。