【ワシントン=塩原永久】米連邦準備制度理事会(FRB)が15日にゼロ金利政策と量的緩和を同時に実施する異例の臨時対応に踏み切ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大への危機対応を鮮明に打ち出した形だ。
FRBは3日にも0・5%の緊急利下げを実施したばかりで、2週間も待たずに1・0%の追加利下げを断行。新型コロナの感染者は米国でも急増しており、FRBは今後、経済への悪影響が広がると見込んで先手を打とうとしている。
パウエル議長は記者会見で、「経済が(新型コロナの影響を)乗り越えたと確信できるまで(ゼロ)金利を維持する」と話し、慎重に景気動向を見極める意向を示した。
FRBの地区連銀からの報告でも、全米各地の観光業が打撃を受け、製造業でもサプライチェーン(部品の調達・供給網)に悪影響が出始めている実態が明らかになっていた。
パウエル氏は、米経済が「第2四半期(4~6月)に弱くなる」と予想。感染収束が遅れれれば、その後も悪影響を引きずる見込みだと懸念を表明した。
また、政府の出入国制限措置により、米航空大手の旅客減少は、「(米中枢同時テロの)911以来の深刻さだ」(エコノミスト)との指摘もある。中小企業を中心に倒産懸念も浮上しかねない。
FRBは金融環境について「顕著にひっ迫した」(パウエル氏)とみている。今回、2008年の金融危機後に導入されたゼロ金利と金融資産を大量に買い取って市場に資金を流し込む量的緩和の2本柱を改めて実施し、FRBとして当面、採り得る対策を予防的にとったことは強い危機感の表れで、FRBは「背水の陣」を敷いたといえる。