【ワシントン=塩原永久】週明け16日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は暴落し、前週末からの下げ幅は一時2700ドルを超え、取引時間中の過去最大を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、事実上のゼロ金利政策と量的緩和の再開を決めたが、新型コロナウイルス感染症による景気の下振れ懸念を払拭できず、投資家の売りが加速した。
同市場で主要株式指標は取引開始直後から急落し、証券取引所は下落率が規定を超えたとして、取引を一時停止する措置「サーキットブレーカー」を発動した。同措置の発動は今月に入って3度目となった。
ダウは午前9時半すぎの取引停止時点で、前週末比2250・46ドル安の2万0935・16ドルをつけた。
FRBは15日、ゼロ金利導入などを決めた臨時FOMC後の声明で、「新型コロナウイルス感染症が多くの国で社会・経済活動を害している」と指摘し、景気への影響を最小限に抑える方針を示した。臨時FOMCでは主要政策金利を1・0%引き下げて0~0・25%にすることを決定。米国債などを購入し、計7千億ドル(約74兆円)規模の資金を市場に供給する量的金融緩和にも踏み切る。
FRBは3日の臨時FOMCで政策金利を0・5%引き下げ、年1・0~1・25%にしたばかりだった。今回さらに、2008年の金融危機「リーマン・ショック」後に導入したゼロ金利を15年末以来、約4年ぶりに再開する。
記者会見したパウエル議長は、新型コロナの感染拡大が「米国と世界に深刻な影響がある」と述べ、米国ですでに旅行・観光産業に打撃が及んだと説明。さらに経済影響が広がる前に、利下げによって景気を下支えする必要性があるとの認識を示した。
またパウエル氏は「すべての政策手段をとる準備がある」と述べ、さらなる追加対応策に躊躇(ちゅうちょ)しない考えを示した。マイナス金利導入の可能性は「米国では適切ではない」と否定した。
FRBは次回の定例のFOMCを17~18日に予定していたが、これを15日の臨時会合に代える。