自民党の河井案里(あんり)参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した昨年の参院選をめぐる公選法違反事件で、車上運動員への違法報酬に加え、夫で前法相の克行衆院議員(57)=自民、広島3区=が陣営スタッフに違法報酬を支払っていた疑いが浮上した。関係者によると、克行氏は政治資金の口座の通帳写真を連日のように送らせるなどしていたという。資金の隅々にまで目を光らせてきた克行氏の関与を立証できるかどうか、捜査の行方に注目が集まっている。
陣営関係者によると、克行氏は昨年の参院選で、政治資金の口座残高を逐一把握するため、担当者に通帳の残高が記載された写真を毎日送信するよう要求。さらに各所からの請求や支払いも一つ一つ確認した上で、「こちらを先に払ってほしい」などと細かく指示していたという。
克行氏は案里氏陣営を事実上指揮しており、車上運動員への違法報酬の支出を把握していた疑いが指摘されている。陣営関係者は産経新聞の取材に対し「ウグイス(車上運動員)や他の運動員への報酬支払いも、克行氏が知らないところで実行できるわけがない」と証言した。
昨年の参院選をめぐっては、公示前に自民党本部から案里氏と克行氏が代表を務める政党支部に計1億5千万円の入金があったことが判明。党内からも「破格だ」「異常な金額だ」などと批判が上がっている。
克行氏の指示のもと、違法報酬以外にも多額の資金が参院選に投じられていた可能性が高い。
選挙中は各家庭に電話で支持を呼びかける「電話作戦」を大規模に展開していたといい、広島県内選出の元国会議員は「県内の知り合いは、みんな案里氏陣営から電話がかかっていた」と驚く。陣営関係者も「政権幹部らの応援時には数千個の立て看板を準備したとも聞いた。1億5千万円あっても足りないぐらいかもしれない」と話す。