東京都港区赤坂の雑居ビルで発生した女性襲撃事件は、社会に大きな衝撃を与えています。ライブハウスで出演予定だった40代女性が刃物で襲われたこの事件で、現役の陸上自衛官である大津陽一郎容疑者(43)が殺人未遂の疑いで逮捕されました。容疑者は「女性とは知り合いだがトラブルはなかった」と供述し容疑を否認していますが、防犯カメラに映る周到な行動からは、計画性の高さが浮き彫りになっています。
赤坂での凶行と容疑者の周到な準備
事件は10月16日午前10時25分頃、赤坂の雑居ビルで発生しました。音楽ライブに出演予定だった女性が、ライブハウスの開場を待っていたところを、突然男に刃物で襲われました。女性は手と脇腹を刺され、内臓に達する重傷を負いましたが、一命は取り留めています。犯行後、男は自転車に乗って現場から逃走し、港区青山方面を経て、最終的には約20キロ離れた陸上自衛隊朝霞駐屯地へと向かいました。
警視庁赤坂署へ入る殺人未遂容疑の大津陽一郎容疑者
大津容疑者の行動は逮捕前から注目されていました。黒の作業服にキャップ姿の容疑者は、ライブハウスが開く予定の2時間以上前から現場付近をうろついていたことが判明しています。さらに、被害女性が出演するライブの告知ポスターには、黒いスプレーで大きく「バツ印」がつけられていました。このライブは10年ほど前から定期的に開催されており、警察は容疑者が女性の予定やライブ場所を事前に把握していた可能性を視野に入れ、捜査を進めています。
現役自衛官の逮捕と「意外な関係性」
逮捕された大津陽一郎容疑者は、陸上自衛隊朝霞駐屯地所属の2等陸曹であることが明らかになり、世間の注目を集めました。2000年3月に陸自に入隊し、昨年3月からは第1施設大隊に所属。防衛警備や災害派遣を担う部隊で、容疑者はブルドーザーやクレーンなどの装備資機材の管理を担当していました。関係者からは勤務態度が真面目であるとの声も聞かれ、駐屯地から離れた場所に妻子とともに住んでいるとされています。
警察の取り調べに対し、大津容疑者は被害者への怨恨も犯行自体も否認し、「当日は朝から昼まで基地にいた。私はやっていない」と供述しています。しかし、陸自の関係者によると、事件当日は休みだったとされており、アリバイ工作の可能性も指摘されています。
犯行時の行動からは、その計画性の高さがうかがえます。容疑者は犯行現場に到着した際、白いスニーカーに履き替えていたほか、犯行時には手袋をはめ、靴にはカバーをつけていたこともわかっています。さらに逃走時には上着を着替えており、自宅からは犯行時に着用した可能性のある衣類や、逃走に使われた自転車が見つかっています。しかし、凶器は未だ確認されていません。
当初、「知り合い」と供述していた被害女性との関係についても、「意外な関係性」が明らかになってきました。逮捕前の任意の取り調べで、大津容疑者は「女性とは9年ほど前にSNSで知り合い、妻子がいることを伏せて交際した」と話していたようです。今年夏に女性から別れを切り出されたものの、本人は特にトラブルはなかったと主張しています。警視庁は詳しい経緯を引き続き調べており、容疑者がいつから女性の襲撃を企て、そしてなぜ犯行に及んだのか、動機の解明が待たれます。




