東京五輪・パラリンピックの延期が決まったことを受け、大がかりな中継を予定していたテレビ各局は、大幅な番組編成の見直しを迫られることになった。56年ぶりの自国開催のため、2016年のリオ五輪を上回る長時間放送を計画。NHKは計1000時間規模とみられていただけに打撃は大きい。五輪を通じた普及拡大が期待されていた超高精細映像の4K、8K放送、インターネットへの同時配信も影響を免れない。
■史上最大規模の放送
日本テレビの小杉善信社長は延期決定の前日、23日の記者会見で、「もともといろいろなケースを想定してシミュレーションはやっている」と話していたが、それが現実のものとなった。
《最高水準、最大規模の中継放送》とうたっていたNHKは令和2年度の予算で、地上波、衛星波での競技中継や特設サイトの経費として264億円を計上。
五輪では、衛星波も含めた5波で史上最大規模の放送を予定し、日本人選手が出場する全競技の放送を目指していた。パラリンピックでも全競技を初めて放映する計画で、五輪関連の放送時間は、リオ五輪の約600時間を大きく上回る見込みだった。
在京民放キー局も今回の五輪に向け、特別な態勢を敷いた。「どこのチャンネルを見ればいいのか分からない」と視聴者が戸惑うことがないよう、大会期間中のほぼ毎日、各局が日替わりで午前9時から午後11時までの長時間放送する枠組みを構築していた。
■ネット事業にも打撃
このため、NHK、民放とも五輪中止を受けた編成見直しは、大規模なものにならざるを得ない。新型コロナウイルスの感染が世界に広がっていく中で、五輪の中止または延期の可能性は指摘されていたとはいえ、各局のショックは大きい。
昭和39年の東京五輪がカラーテレビ拡大の一つのきっかけとなったように、過去の五輪は、最近の放送技術や通信技術が披露され、その後一般家庭に広がっていく役割も果たしていた。8K、4Kによる放送が行われる今回の五輪でも、放送に対応したテレビの普及が期待されており、中止に伴って経済的な影響も出てくることが予想される。
また、各局が取り組むネット事業にとっても打撃となる。NHKは4月から、テレビ番組を放送と同時に流す「常時同時配信」を本格的に開始する。今回の五輪は、新サービス普及の起爆剤となるはずだったが、水を差されることになった。