【経済インサイド】「リーマン級」の新型コロナ 金価格、最高値更新の思惑浮上





経済の不透明感が強まる中、金に注目する投資家が増えている

 新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場がパニックに陥る中、金の国際価格が一時急落した。通常の投資家行動では、有事の際はリスクを回避するために金の購入を選択し、金価格が上昇する「有事の金」が知られているが、今回は裏切られた格好だ。

 歴史をひもとけば、株と金が同時に急落する現象は、2008年秋のリーマン・ショックの際にもみられたが、金価格はその後、11年9月に史上最高値を記録した。「リーマン級」となった株価下落局面に、市場では早くも金価格上昇への思惑が出ている。

 足元の金価格は今年に入り、米国とイランの対立や新型コロナの感染拡大を材料にして上昇傾向が続いていた。米ニューヨーク市場で取引の中心である4月物は、3月9日に一時1オンス=1700ドル台となり、7年3カ月ぶりの高値をつけた。

 ところが翌10日以降、ダウ工業株30種平均が歴史的な暴落局面を迎えると、金は5営業日続落した。ダウ平均が約3000ドル落ちた16日には、金も一時1450・9ドルと約4カ月ぶりの安値まで売り込まれた。

 株式市場にショックが起きると、永遠に価値を失うことのない金はリスク回避の受け皿として存在感を高めるのが常だ。それなのに新型コロナの感染が世界的に拡大するにつれ、金価格は急降下した。

 この現象について、野村証券の大越龍文シニアエコノミストは「信用取引で損失を出した投資家が追加証拠金(追証)を差し出す必要に迫られたほか、3月末の期末決算を控えた企業が利益を確定する『益出し』のため、高値圏にある金が売られている」と解説する。世界的にドルへの需要が高まっている。

 ドル資金の需要の強さは、対ドル円相場でもみて取れる。日経平均株価は年初から3000~4000円程度切り下げたのに対し、足元の円相場は1ドル=110円を挟んで推移し、年初と比べて変動幅が小さい。

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