【主張】滋賀再審無罪 刑事司法は検証徹底せよ

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 警察も検察も裁判所も猛省すべきだ。そのためには徹底検証を自らの手で行う必要がある。

 滋賀県の病院患者の死亡をめぐり殺人罪で実刑となり服役した元看護助手、西山美香さんの再審公判で大津地裁は無罪を言い渡した。大津地検は上訴権を放棄し、西山さんの無罪が確定した。

 西山さんは患者の人工呼吸器を外して殺害したとして平成16年、逮捕、起訴され、公判で否認したが、殺人罪で懲役12年が確定して服役した。22年にも再審請求したが、大津地裁、大阪高裁、最高裁ともに認めなかった。その全てが誤りだったことになる。逮捕から15年余りを経て得られた結論だ。長すぎる歳月に慄然とする。

 判決は、西山さんには軽度の知的障害があり、恋愛感情に乗じた取り調べの担当刑事が「強い影響力を独占し供述をコントロールした」と捜査手法を強く批判し、自白は「不当、不適切な捜査によって誘発された」とみなして信用性を否定した。

 患者の死因は致死性不整脈だったなどの可能性があり、判決は事件性そのものにも疑問を呈した。典型的な冤罪(えんざい)である。

 再審公判の裁判長は「手続きが一つでも適切に行われていれば、このような経過をたどることはなかった」と述べ、「刑事司法に携わる全員が自分の問題として考えるべきだ」と求めた。

 県警は「患者がたん詰まりで死亡した可能性がある」とする医師の所見が書かれた捜査報告書を再審の確定後に提出した。立件に不利な証拠を隠蔽(いんぺい)した疑いがある。再審公判では検察の有罪立証断念により、取り調べ刑事の証人尋問も見送られた。真相は何も明らかになっていない。

 今後は捜査の違法行為を追及する国家賠償訴訟の場などが真相解明の場となる。だがそれでいいのか。刑事司法の当事者は自ら検証を徹底すべきではないのか。

 検察には有罪立証の断念や上訴権の放棄ではなく、全ての証拠を改めて検証し、積極的に無罪論告を行うなどの方法もあった。大阪地検特捜部の証拠改竄(かいざん)事件では、最高検の主導で捜査チームを編成して事件化した。

 裁判長はまた、「時間は巻き戻せないが未来は変えられる。西山さんの15年を無駄にしてはならない」とも説諭した。刑事司法当局に向けられた言葉だろう。

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