新潟県上越市の中川幹太市長(50)は、自身の兵庫県三田市の米に関する不適切発言について、市民や関係者に対して深い謝罪を表明しました。特に、三田市の米を「まずい」と表現したことに対し、三田市の田村克也市長(59)から「ふるさと三田を侮辱するもの」として強い抗議が寄せられており、この問題は地域間で大きな波紋を広げています。中川市長は記者会見を開き、一連の発言とその背景、そして今後の対応について説明しました。
上越市役所の広報対話課が明らかにしたところによると、中川市長が三田市の米について言及したのは一度だけではありませんでした。
一度目の発言は7月1日に行われた、地域活性化企業人制度により着任したふるさと納税専門官への委嘱状交付後の懇談会です。中川市長が上越市のふるさと納税に話題を移した際に、自身の若い頃に酒米「山田錦」の主要産地である兵庫県三田市に住んでいた経験に触れました。三田市で作られる山田錦から醸される酒が「美味しい」と専門官に伝えた際に、「でも、米まずいんですけどね」と発言したと報告されています。
二度目の発言は、その2日後の7月3日、市内の専門学校で開催された学生向けの特別授業での講話中でした。市長は冒頭、上越市に住む生徒たちに対し、「地元にある良いものに目を向けてほしい」という趣旨で話を始めました。この際にも再び、三田市に住んでいた経験と山田錦に言及し、「三田市で作られる山田錦が灘や伏見で美味しいお酒になっている」と語った後に続けて、「(米は)あんまり美味しくない」と述べたとされています。
中川市長自身は、これらの「まずい」「あんまり美味しくない」といった発言の意図について、現在の三田米の品質に対する評価ではなく、あくまで30年以上前に自身が三田市に居住していた際に個人的に食べた米の感想として発言してしまったものであると釈明しています。
上越市長 中川幹太氏が三田米発言について謝罪する様子
三田市の田村市長からは、7月7日付で中川市長の発言を「ふるさと三田を侮辱する倫理観に欠けるもの」であるとし、発言の謝罪および撤回を求める抗議状が上越市へ送付されました。これを受け、上越市は中川市長のコメントとして、「一部報道があったお米に関する私の発言につきまして、三田市様並びに三田市民の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、また、ご不快な思いを抱かせてしまったことにつきまして、心から深くお詫び申し上げます。三田市様からの『抗議状』に対しましては、誠意をもって対応してまいります」との文書回答を寄せました。さらに、同日には上越市の公式ホームページ上にも、「市長の不適切発言に対するお詫び」と題した950文字を超える謝罪文を公表し、事態の収拾を図る姿勢を示しました。
7月9日午後3時から行われた記者会見で、中川市長は改めて発言に至った経緯を説明し、自身の発言について深く反省の弁を述べました。「こうした発言はどこの産地かは明確ではありませんが、他の産地のお米を貶めるものであり、美味しい米作りに日々、懸命に取り組まれている三田市をはじめ、全国の農業者、関係者の皆さまへの敬意と配慮に欠く軽率で極めて不適切な発言であったと猛省しております」と語り、農業関係者への影響を認める形となりました。
中川市長は、三田市の米に言及した背景には、比較対象として「上越市の米が美味しい」という点を強調したい意図があったとも述べています。
今後については、「三田市産を含む兵庫県産米の評価の回復、三田市ならびに関係者の皆さまの信頼の回復に向け、誠心誠意尽くしてまいる所存であります」と表明し、信頼回復への取り組みを誓いました。
中川市長は2021年11月に上越市長に初当選し、先日には今秋の任期満了に伴う次期市長選(10月19日告示・同月26日投開票)への立候補を表明したばかりです。2期目を目指す矢先での今回の不適切発言は、その政治的影響が懸念されています。中川市長を巡っては、過去にも同様に発言が問題視されるケースがありました。例えば、2023年7月には新潟経済同友会との懇談会で県内の私立高校について「県立、公立よりもレベルが下にある」と発言し、その後謝罪に追い込まれています。また、昨年6月には市議会で新たな工場誘致に関して「従業員の多くは工場勤務で高校卒業レベル」と発言し、市議会から辞職勧告決議を受けたものの、続投の意向を表明していました。
今回の新たな不適切発言は、度重なる過去の事例と相まって、首長としての信頼性に大きな打撃を与える可能性があります。上越市役所広報対話課によると、今回の件に関して7月9日正午現在で、市には93件もの苦情が寄せられています。苦情の内容は「市長に対する批判」「市長発言により米の評価が貶められたとするお怒りの声」「三田市への謝罪、発言の訂正・撤回を求める声」に加え、「市長職を辞するべきである」といった厳しい意見も含まれているとのことです。
記者会見で中川市長は、謝罪に重きを置くとして、自身の進退については「先のことについて考えは至っていない」と明言を避けました。相次ぐ不適切発言に対する市民や関係者の不信感が募る中、今後の市長の動向と、この問題が次期市長選に与える影響が注視されています。
【参考】女性自身