【ワシントン=黒瀬悦成】ロイター通信は9日、ハリス駐韓国米大使が年内の退任を検討していると伝えた。日系人のハリス氏は、トランプ政権による在韓米軍の駐留経費負担引き上げ要求に対する韓国世論の反発の矢面に立たされたほか、自身の口ひげを「日本統治時代の朝鮮総督を連想させる」と反日感情の強い一部の市民から非難されるなど、騒動に巻き込まれるケースが相次いでいた。
複数の関係者がロイターに語ったところでは、ハリス氏は私的な場で周囲に対し、11月の米大統領選以降は大使を続ける意思がないことを明らかにした。関係者の一人によれば、仮にトランプ大統領が再選されたとしても、11月で辞任したい考えだとしている。
ハリス氏は、神奈川県横須賀市生まれ。父親は米海軍士官で母親は日本人。海軍士官学校を卒業後、太平洋軍司令官などを務め、2018年5月にトランプ氏から駐韓大使に指名され、同年7月に着任した。
ハリス氏は口ひげを問題視された際、「日韓には歴史的な対立が存在するが、私がたまたま日系人だからといって、そうした歴史を私に重ね合わせるのは間違いだ」と述べ、批判を一蹴した経緯がある。
関係者の一人は、「誰だって一生懸命職務に取り組んでいるのに感謝もしないような人たちとは付き合いたくない」と指摘し、ハリス氏が退任に傾いているのは、自身に対する不当な中傷に嫌気がさしているためだとの見方を示した。