香港民主派を大量逮捕 元総督「一国二制度を葬る一歩」と非難





警察署を出る「香港民主主義の父」と称される李柱銘(マーティン・リー)氏(前列中央)ら=18日、香港(AP)

 【香港=藤本欣也】香港当局は19日までに、違法集会参加などの容疑で18日に逮捕した民主派の主要メンバーら15人全員を起訴し、15人は保釈された。香港メディアが報じた。民主派の一斉逮捕に対し、国際社会からは「一国二制度を葬るための新たな一歩だ」(パッテン元香港総督)などの批判の声が上がっている。

 逮捕・起訴されたのは、民主派政党、民主党の初代主席で「香港民主主義の父」と称される李柱銘(マーティン・リー)氏(81)や、民主派寄りの香港紙、蘋果日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)、民主党元主席で1989年の天安門事件の追悼集会などを主催してきた何俊仁(アルバート・ホー)氏(68)ら。

 これら3人は、「香港の良心」と称された元香港政府ナンバー2の陳方安生(アンソン・チャン)氏(80)とともに、中国の国営メディアから「香港に災いをもたらす四人組」と非難されている人物だ。

 今回、中国・香港当局が15人の逮捕に踏み切った背景については、さまざまな臆測が流れている。

 香港紙、明報は「李氏や黎氏らが昨年、米欧諸国に赴いて“遊説”した」ことに注目する。李氏や黎氏らを逮捕・起訴することで、香港から海外に出られないようにし、中国や香港当局に不利な情報発信を阻止する狙いがあるとの見立てだ。特に黎氏は、ペンス米副大統領やポンぺオ米国務長官と面会している。

 このほか蘋果日報は、9月6日に予定される立法会(議会)選を前に、当局が「白色テロ」を強行したと指摘し、民主派陣営の立候補に向けた動きなどを封じ込める思惑があるとみる。

 一方、中国・香港当局の一連の動きには「シナリオ」があるとにらむのは、民主党の胡志偉主席だ。

 立法会の内務委員会では昨年10月以降、民主派議員らの抵抗で、委員長を選出できない状態が続く。民主派の目的は、中国国歌を侮辱する行為などを禁じる「国歌法」の早期成立を阻止することにある。

 これに対し、中国政府で香港政策を担当する「香港マカオ事務弁公室」と、中国の香港出先機関である「香港連絡弁公室」が最近、「議員の職責を果たせ」などと非難。民主派が反発を強めている矢先に、一斉逮捕が起きた。

 今回の一斉逮捕は、国際的に知名度が高い李氏らが逮捕者に含まれていたことで、国際社会の注目を一層集めることになった。

 英領香港時代に最後の香港総督を務めたパッテン氏は声明を発表し、「中国と香港政府は、一国二制度を葬り去るために新たな一歩を踏み出した」と非難している。



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