三谷幸喜脚本ドラマ『もしがく』が直面する苦境:豪華キャストも視聴率低迷

10月1日に放送が開始された、三谷幸喜氏が脚本を手がけるフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(通称『もしがく』)が、期待に反して苦戦を強いられています。主演の菅田将暉をはじめ、二階堂ふみや浜辺美波といった豪華な顔ぶれが揃い、放送前から高い注目を集めていたにもかかわらず、初回視聴率5.4%(世帯)をピークに、第2話で4.4%、第3話では4.0%と、回を追うごとに下降傾向を見せています。

豪華キャストと高予算を投入も、裏番組に視聴率でまさかの敗北

『もしがく』の視聴率低迷は、テレビ業界に衝撃を与えています。特に10月8日放送回では、同時間帯で日本テレビ系が放送する『ESCAPE それは誘拐のはずだった』に、世帯、個人、コア視聴率、さらには見逃し配信の再生回数の全てで敗北しました。『ESCAPE』の視聴率が世帯4.7%、個人2.5%、コア1.6%だったのに対し、『もしがく』はそれぞれ4.4%、2.3%、1.0%と下回る結果となりました。『ESCAPE』は桜田ひよりと佐野勇斗というフレッシュなキャストが民放キー局のゴールデン・プライム帯ドラマで初主演を務める作品であり、日本テレビにとっては大きな勝利と言えるでしょう。

『もしがく』は、1984年の渋谷を再現した大規模なオープンセットを千葉県内に設営するなど、近年のフジテレビドラマとしては異例の巨額な予算が投入されています。見逃し配信でも苦戦が続けば、この多額の制作費の回収は困難になる可能性が指摘されています。

三谷幸喜氏、フジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の苦境に注目三谷幸喜氏、フジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の苦境に注目

三谷幸喜作品の失速と大物脚本家に見られる共通の課題

三谷幸喜氏の作品が苦戦しているのは、ドラマだけにとどまりません。2024年公開の長澤まさみ主演映画『スオミの話をしよう』も評価が芳しくなく、興行収入は前作『記憶にございません!』の約半分となる17億円にとどまっています。これは、かつての三谷作品が持っていた輝きが失われつつあることを示唆しています。

また、この傾向は三谷氏に限ったことではなく、他の「大物脚本家」の作品にも共通して見られます。NHK朝ドラ『ちゅらさん』や『ひよっこ』などを手掛けた岡田惠和氏が脚本を担当するフジテレビ系ドラマ『小さい頃は、神様がいて』も、初回5.0%、第2話4.0%と厳しい状況にあります。内容自体は決して悪くないものの、第1話の展開がややゆったりしていたため、視聴者が離脱してしまった可能性が指摘されています。TVerにおける「お気に入り登録者数」でも、『もしがく』が秋ドラマランキング11位の約57万人、『小さい頃~』が17位の約46万人と、他の秋ドラマと比較して伸び悩んでいます。

これらの状況は、豪華キャストや著名な脚本家という「ブランド力」だけでは視聴者を惹きつけ続けることが難しくなっている現状を浮き彫りにしています。特に初回での掴みや、テンポの良いストーリー展開が、競争の激しい現代のテレビドラマ市場において、視聴者の継続的なエンゲージメントを得るための鍵となっていると言えるでしょう。

参考資料