総額12・8兆円給付も消費に回るのは3兆円程度か





政府与党政策懇談会で発言する安倍首相。右は麻生財務相=20日午前、首相官邸

 令和2年度補正予算案に一律10万円の現金給付が盛り込まれた。ただ、総額12・8兆円規模の給付金のうち、実際に国内で消費に回るのは多くて3兆円程度と指摘される。外出自粛が続くうちは新型コロナウイルスの感染拡大で甚大な打撃を受けた娯楽業にもお金が回りにくく、当面は食料品など“巣ごもり消費”の需要が一段と増しそうだ。

 「外出自粛とか、活動が制約され迷惑がかかるのは間違いない。みんなで連帯して乗り切るためにやる」

 麻生太郎財務相は20日の記者会見でこう述べ、現金給付の景気活性化策としての効果には慎重な見方を示した。

 実際、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは給付金の消費増加額が1・3兆~3・2兆円にとどまるとみる。これは麻生政権時代の平成21年に国民1人当たり原則1万2千円を配った定額給付金の結果を踏まえたもの。臨時収入を得た家計が消費に回す割合は10~25%と見込む。

 一人10万円の給付だけに人数が多い世帯の方が恩恵が大きい。1世帯当たりの人数が最も多いのは山形県(2・78人)、最も少ないのは一人暮らしが多い東京都(1・99人)で、地域差がある。世帯人数は東北や北陸が多い傾向だ。持ち家率が高い地域とも重なるため、「消費の喚起効果も比較的大きい」(熊野氏)。

 一方、給付金の効果がどこまで出るかは、支給が始まる5~6月の感染状況次第ともいえる。10万円が手元に届いても、緊急事態宣言が解除されず外出自粛が続くなら、スーパーなど身近な場所で使うしかない。

 逆に政府の思惑通り感染を抑制でき、補正予算案に盛り込んだ大規模な観光キャンペーンとの相乗効果が見込めるなら消費拡大につながる。東日本大震災後に復興需要が急拡大したように、コロナ禍で打撃を受けた娯楽業などを支援する動きにつながりそうだ。

 いずれにせよ、給付金は感染拡大で傷んだ家計の“止血”という側面が色濃く、収束後の景気浮揚には力不足だ。大幅に増額された2年度補正予算案だが、早晩、2次補正予算の検討を迫られそうだ。(田辺裕晶)



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