【話の肖像画】台湾元総統・陳水扁(69)(31)「これは政治迫害だ」


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2008年11月、逮捕された直後、手錠をかけられた両手を掲げ「台湾、頑張れ!」と叫んだ

 《2008年11月11日、検察に5度目の出頭をしたとき、機密費横領などの容疑で逮捕された。現場付近には約3千人の警察官が動員され、厳戒態勢が敷かれていた。少し離れたところに、自身の支持者約100人が1カ所に集められていた》

 刑務所に入ることは覚悟していた。同年5月に国民党の馬英九政権が発足してから、親中路線を強力に推進していた。11月6日、共産党の高官で中国の対台湾交流窓口のトップ、陳雲林氏の初訪台が実現し、馬氏と会談した。陳氏へのお土産として「台湾独立分子」の私を逮捕するのではないか、と予想していたのだ。

 身柄が移送されたとき、警察官が急に私の腕をつかみ、手錠をかけたことには驚いた。刑事訴訟法には「被疑者の名誉に配慮すること」とある。前総統の私は、これまで求めに応じて出頭してきたし、暴れたこともなかった。凶暴犯罪者の扱いを受けるとは思わなかった。しかし次の瞬間、メディアの前で私に恥をかかせて犯罪者とのイメージを定着させようとした、馬政権の狙いを理解した。

 車に乗せられる直前、私は手錠をかけられた両手を高く掲げ、報道陣と支持者に「これは政治迫害だ。台湾、頑張れ!」と力いっぱい叫んだ。

 《馬政権はすぐに自身の一連の事件への捜査を本格化させた。妻、子供、親戚、友人、それに自身に近い閣僚、次官、県長、秘書らが次々と検挙され、起訴された》

 横領、収賄、マネーロンダリング、インサイダー取引、公文書偽造…。さまざまな容疑で私の周辺は完全に「犯罪者集団」とされてしまった。取り調べは厳しく、不起訴となった人も含めると数百人に及んだ。

 選挙によって選ばれた政権の中に、数人の犯罪者がいることは不思議なことではない。しかし、もし前政権の主要人物のほとんどが起訴されたなら、これは犯罪への捜査ではなく、政治報復である。民主主義を否定する行為だといわざるをえない。

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