【北京=三塚聖平】中国で、2020年の国内総生産(GDP)成長率目標の設定を見送るべきだという意見が出ている。新型コロナウイルス流行で、中国経済の先行きが不透明なためだ。達成のため無理な景気対策に走ることを避けるのが狙いだが、未達の責任を問われないようにするための予防線の可能性もある。
「今年はGDP成長目標を設けるのか?」
中国紙の経済日報(電子版)はこう指摘する。同紙によると、中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員の馬駿(ば・しゅん)氏が目標見送りを3月末に提言した。馬氏は「中国経済は巨大な不確実性に直面している」と強調。現時点で具体的な目標を設定しても、その達成のためにどの程度の景気刺激策が必要か予測できないという認識を示す。
馬氏の提言に賛同の声も出ている。毎日経済新聞(電子版)は「この時期に数値目標を設定しても意義は大きくない」というエコノミストの見方を伝える。
成長率目標は例年、3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)で示されており、19年は「6・0~6・5%」だった。今年はいまだに全人代の開催めどが立たず、20年の目標は宙に浮いたままとなっている。
17日に発表された20年1~3月期のGDP成長率は6・8%減と、四半期ベースで初のマイナス成長となった。昨年末には、20年の成長率目標は「6%前後」になるとみられていたが、新型コロナの影響による経済減速で非現実的となっている。