【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスの流行が深刻だった中国で、観光地の再開が進んでいる。感染拡大に歯止めが掛かったと判断して防疫措置が緩和されたことを受けた動きだ。5月1日に始まる労働節(メーデー)の連休では約9千万人が旅行に出るという見通しがあるが、感染再流行の懸念から各地の観光地では入場制限といった感染対策が強化されている。
北京市郊外にある万里の長城の観光地点「八達嶺(はったつれい)」。新型コロナ流行後に約2カ月間休業していたが3月下旬に営業を再開した。
「健康コードを見せて」
現地を訪れると、入場までに4回も同じことを求められた。「健康コード」は、健康状態を示すスマートフォンアプリで、これで「問題なし」と確認できなければ入場できない。チケットの事前予約が必須で、入り口など人が密集する場所では地面に1メートル間隔を示す目印が張られるなど厳戒態勢がとられていた。
土産物店の男性店員は「団体や外国人客が復活していないので売り上げは振るわないが、観光客は徐々に増えている」と話した。
中国各地では観光地の再開が伝えられている。今月上旬に封鎖措置が解除された湖北省武漢市でも、観光名所「黄鶴楼(こうかくろう)」が29日に再開すると報じられた。
中国メディアによると、5月1~5日の労働節の連休期間中には、約9千万人が旅行に出ると予測されている。今月4~6日の「清明節」の連休では、延べ約4325万人が国内旅行に出かけたと推計されており、多くの観光客が押し寄せた人気観光地もあったと伝えられている。
中国国内では、観光地での密集により再び感染が拡大することを懸念する声がある。中国政府は今月中旬、観光地の新型コロナ対策に関する通達を出している。この中で、予約制度を整備して時間帯を分けるなど、来場者が密集することがないよう求めている。
中国のSNSでは、気晴らしに久々に旅行に出ようとする人がいる一方で、「今は家でゆっくりしているのが最も安全だ」という慎重な見方もある。