外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正出入国管理法(入管法)が施行されて1年が経過した。だが、人手不足の解消を目的に導入された新たな在留資格「特定技能」の取得者数は極めて低調なままだ。
初年度の受け入れ数はわずか3千人で、想定した最大4万7千人余の6%にすぎない。
一方で昨年末時点の技能実習生は40万人を超え、前年比で25%増に膨らんだ。
技能実習生は低賃金や長時間労働が問題化し、平成30年には9千人以上が失踪したとされる。特定技能の導入で、こうした問題を是正するのではなかったのか。実態は明らかに逆行している。
特定技能資格を得るための手続きの煩雑さや制度の周知不足に加え、ベトナムなど国策ビジネスとして送り出す側の態勢整備に時間がかかっている側面もある。
だが、このねじれ現象が突きつけているのは、問題の多い技能実習制度を残したまま、改正ありきで導入した特定技能制度そのものの不備だろう。
来日外国人が日本語と技能試験がある特定技能より、試験のない技能実習を選ぶのは当然である。雇用側にとっても、転職が認められている特定技能者より、技能実習生を重宝したくなる。
新制度では外国人の生活支援を目的に「登録支援機関」に委託することを求めており、費用負担や手続きの煩雑さを嫌った中小企業は様子見を決め込んでいる。
改正入管法は2年後の見直しをうたっているが、新制度が抱える問題はすでに明らかだ。特定技能と技能実習の関係性については直ちに改めるべきだ。
必要なのは、目の前にある制度矛盾の解消だけではない。国の在り方をどう描くか、中長期のビジョン見直しである。
人口減少社会で重要なことは、外国人労働者による場当たり的な数合わせではない。
働く意欲がある女性や高齢者、非正規雇用に苦しむ若い世代の雇用を、産業構造や社会構造の変革につなげることである。
こうした視点を置き去りにして小手先の修正を繰り返し、短期的な事態の改善をいくら企図しても、中長期的には国の衰退が避けられない。場当たり的な対応を改め、抜本的な見直しを急ぐことが必要である。