【主張】雇用助成金の拡充 手続き簡略化で支援急げ


 政府が新型コロナウイルスの感染拡大抑止に関する追加経済対策で、企業に休業手当を支援する雇用調整助成金の上限額の引き上げを決めた。休業手当を支給されない従業員が直接申請できる新たな手当も創設する。

 雇用調整助成金の上限を引き上げれば、中小企業などの申請意欲を高めて解雇を防ぐことにつながる。しかし、この助成金の申請手続きは煩雑で、途中で申請を諦めてしまう中小企業も多い。

 コロナ禍による失業を防止するためには、雇用調整助成金の申請手続きを思い切って簡略化するほか、申請から受給開始までの期間短縮も欠かせない。オンライン申請も積極的に進めてほしい。

 雇用保険を通じて給付される雇用調整助成金は、業績の悪化した企業が従業員を解雇せずに休業させた場合、休業手当の一定割合を国が助成する仕組みだ。新型コロナ対策の休業要請などに応じた中小企業には、国が全額を支払うなど支援を拡大している。

 政府はこうした制度拡充の一環として、休業手当の上限額を大幅に増やす。現在は日額8330円が上限だが、これを世界最高水準とされる英国並みの同1万5千円にアップする。上限額の引き上げで従業員の解雇を回避し、休業にとどめる動きを促したい。

 また、雇用調整助成金を申請していない企業の休業者に対し、賃金の最大8割程度を直接給付する仕組みも新たに導入する。これは失業したとみなして手当を支払う「みなし失業」と呼ばれる制度で、激甚災害などの際に導入された例がある。従業員の生活支援に向け、早期に補正予算案を編成して実現を急がねばならない。

 政府は雇用調整助成金の申請に必要な記載項目を半減したが、それでも中小企業などにとっては事務負担が大きいとされる。

 ハローワークには相談が殺到し、受給までに時間もかかっている。助成要件の緩和を含めて手続きの簡略化を図り、雇用の安全網として機能させる必要がある。

 全国で発令された緊急事態宣言は39県で解除され、政府は残る8都道府県についても感染状況をみて解除を検討する。

 だが、深刻な打撃を受けた飲食・宿泊業などの経営は厳しく、従業員が失業する恐れは強まっている。雇用の確保に向けて政府の機動的な対応が問われる。



Source link