香港、自由な金融空間の喪失危機





バリケードが設置された香港の中国銀行=28日(AP)

 中国が頭ごなしで「国家安全法制」を香港に導入する「決定」を全人代が採択したことは、北京にとり目障りな香港民主派や、デモを続ける学生らに刃を突きつけることを意味する。

 だが、国際金融センターとして中国の経済成長を支えた香港という空間の価値は、英国植民地時代からの透明性の高い「法制度」にあったといってもいい。

 香港の独立した法制度を脅かせば、一国二制度で返還後も残ったレッセフェール(自由放任)と呼ばれた自由な経済政策も危うくなる。米国にも香港が見放されると、中国経済には、もろ刃の剣が襲いかかる。

 中国が国連に議席もなかった1960年代から、広東省と陸続きの香港は中国と海外を結ぶほぼ唯一の窓口で、貿易拠点として中国を潤してきた。人民元に国際的な価値のない時代、中国は米ドルと為替でリンクする香港ドルを使った。

 立教大の倉田徹教授によると、2018年に海外から中国に向かった投資額の約70%が香港経由。中国企業は香港金融市場で同年に1千億米ドル(約10兆8千億円)の資金を調達した。香港は中国にとり「金の卵を産むニワトリ」だった。

 対中ビジネスを進める日米などの企業には、英国流の基準で整備された金融などの法制度こそが価値であり、香港を経由すれば中国リスクも軽減できた。上場企業の情報公開ひとつをとっても、上海市場は香港市場の足元にも及ばない。

 上海が国際金融センターで香港に取って代わる可能性は、法制度からみて現時点でまずないが、香港が地位を失えば中国にカネが流れるパイプは詰まる。中国経済は毛沢東の時代よりも厳しい鎖国への道を歩む懸念がある。(河崎真澄)



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