新型コロナウイルスの感染で、治療により免疫が低下したがん患者は重症化するのではないかと心配の声が上がっています。どう対応したらいいのか。大阪国際がんセンター呼吸器内科の熊谷融(くまがいとおる)主任部長に聞きました。
(編集委員 北村理)
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幸いにして、日本は新型コロナウイルス流行の第1波を押さえ込みつつあります。現在がんと闘っておられるがん患者さんには、今後有効なワクチンや特効薬が開発されるまでは、新型コロナウイルス感染を避ける努力をしつつ、がんの治療を受けていただくことになります。
がん治療による合併症については、すべての内容をこの場でご説明することは困難です。今回は、肺がんの内科的治療を中心に、新型コロナウイルス肺炎で出現する呼吸器症状に類似した症状を呈するがん治療の合併症をあげ、その対策についてご説明します。
肺がんの治療法には、手術、内科的治療として放射線治療や薬物療法などがあります。
薬物療法には、患者さん個人の肺がんの遺伝子異常に基づいた分子標的治療▽がん細胞を直接死滅させるような殺細胞性抗がん剤▽押さえ込まれていた患者さんのがんに対する免疫を活性化する免疫療法があります。分子標的治療や殺細胞性抗がん剤は、がんの治療薬の副作用による肺炎(薬剤性肺臓炎)を生じる可能性があります。自覚症状として咳(せき)、呼吸困難、発熱が生じる可能性があります。