米抗議デモ、「怒り」の連鎖止まず 繰り返される抗議の歴史





5月31日、米ニューヨーク・ブルックリンで行われた黒人男性死亡事件に対する抗議デモで、警察と衝突する参加者(上塚真由撮影)
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 米中西部ミネソタ州で黒人男性が白人警官に拘束時に暴行を受け、死亡した事件を受け、人種差別に抗議する「怒り」の連鎖が収まらない。米国では社会の矛盾に抵抗し、抗議の声を上げる歴史は繰り返されてきた。しかし、変化につながっていないという不満が、暴力の波となって米国を飲み込んでいる。(ニューヨーク 上塚真由)

 ニューヨーク・ブルックリン区で5月31日午後に始まったデモには数百人が参加。黒装束に身を包んだ若者たちは「正義なければ、平和もなし」などと連呼しながら練り歩いた。デモは当初、平和的に進んでいるようにみえたが、若い女性がいきなり警官に突進。女性が拘束されると、数十人が警官を取り囲み「解放しろ!」と次々とペットボトルを投げつけた。

 「これは50年、いや100年続いている重要な戦いだ。声をあげなければ、誰も聞いてくれない。多少暴力的な行為であっても、問題を気づかせるのであれば、価値がある」。デモに参加したレナードと名乗る黒人の男子大学生(22)はこう訴えた。

 米国では根深い人種差別を背景に幾度となく抗議活動が展開されてきた。1950~60年代の公民権運動では、マーティン・ルーサー・キング牧師が率いた非暴力の抵抗運動が幅広く浸透。社会の悪弊をなくすため、法律を破ってでも抗議の意を示す流れは60年代のベトナム反戦運動の原動力となり、92年には白人警官による黒人青年殴打事件への抗議が激化し、ロサンゼルス暴動が発生した。

 近年はとくに黒人社会と警察の対立が激しくなり、2014年の中西部ミズーリ州の事件以降、白人警官による黒人射殺事件が続発。16年には南部ルイジアナ州の事件を契機に「ブラック・ライブス・マター」(黒人の命も大切)をスローガンに掲げる大規模な抗議活動が起こった。

 今回の事件では抗議が日増しに過激化。キング牧師が暗殺された1968年以来の広がりをみせる。

 格差が広がる米社会では新型コロナウイルス禍により低所得者の多い黒人やヒスパニック(中南米)系が最も影響を受け、不満が渦巻いている。ニューヨーク・ハーレム地区でデモに参加した黒人女性のアンジェリーナ・カレンさん(42)は「コロナ禍は多くの黒人を犠牲にしている。割を食うのはいつも黒人。今は何もせず家にいる方が不安で、抗議することが未来につながる」と語った。



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