【ワシントン=黒瀬悦成】米中西部ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人男性暴行死事件を受けた抗議デモは5日も全米各地で実施された。デモは11日連続。首都ワシントンおよび周辺地域では6日に複数のデモやイベントが予定され、当局は警戒を強めている。
ワシントンの女性黒人市長のムリエル・バウザー氏(民主党)は5日、デモ参加者が連日集結するホワイトハウス北側の第16街路の名称について、黒人差別解消運動の合言葉にちなみ「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)広場」に改称した。
バウザー氏また、市職員らに指示して同街路の路上に黄色いペンキで「黒人の命は大切だ」との巨大な文字を書き込んだ。
バウザー氏は、トランプ大統領が首都での暴動を阻止するため治安関連省庁の要員や全米各地の州兵部隊を動員したことに反発。通りの文字はホワイトハウス屋上からも視認できる大きさで、トランプ氏に対する当てこすりの意味を込めた行動なのは明白だ。
バウザー氏はこの日、記者団に「連邦政府に州兵部隊の撤収を要求する」と表明した。また、市内のホテルに宿泊していたユタ州の州兵部隊約200人の宿泊費を市予算から支払うのを拒否し、同部隊はホテルからの退去を強いられた。
これに対しトランプ氏は「市長は無能だ。州兵のおかげで赤っ恥をかかずに済んだのに」とツイッターで非難した。
一方、国防総省は5日、暴動が深刻化した場合に備えワシントン近郊に米軍部隊を待機させていたが、東部ニューヨークの基地から派遣された憲兵隊を帰還させる方針を明らかにした。
米メディアによると、待機部隊の規模は順次縮小させる予定。米軍の投入が必要な差し迫った状態ではないと判断したとみられる。
首都のデモはこの日、再び数百人規模に拡大したが混乱はなかった。参加者の間では「暴力反対」などのほか、「警察予算を全廃せよ」など、法執行活動に制約を課すことを求めるスローガンが目立ち始めた。