トランプ米大統領が、6月末にワシントンで予定されていた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)を延期し、オーストラリア、インド、ロシア、韓国を加えて開催したいと述べた。新型コロナウイルス禍でいっそう顕在化した中国問題について、「包囲網」を形成して協議する意図がある。しかし、唐突な方針表明にG7諸国は戸惑い、とりわけ価値観を共有しないロシアを招くことには反発が出ている。
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米国 「対中包囲」へ露を引き込む
トランプ米大統領が突然表明したG7サミットの拡大構想は、G7諸国から不支持が相次ぎ、早くも足並みの乱れを露呈している。
トランプ氏は5月30日、G7サミットを9月に延期することを明らかにした。さらに、現行のG7の枠組みは「世界の状況を適切に反映しておらず、極めて時代遅れだ」と述べ、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を招待し、「G10またはG11」にしたい意向を表明した。
トランプ氏が拡大構想を発表したのは、米政権が「戦略的競争相手」とみなす中国による経済・軍事分野での覇権的行動に対抗するため、G7を有効活用しようと考えたからだ。ホワイトハウスのファラー戦略広報部長は「中国に対してどう取り組んでいくかについて、伝統的同盟国を糾合して話し合うことができる」と意図を説明した。
CNNテレビ(電子版)は5月31日、トランプ氏がG7拡大方針の中にロシアを含めたのは、「対中国」という戦略的な文脈であれば他の先進国の理解を得やすいとの判断からだと伝えた。ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島の併合を一方的に宣言し、G8から排除された経緯がある。
米紙ニューヨーク・タイムズ(5月31日付)は「トランプ氏はサミット開催国の首脳として、いかなる国の首脳もサミットに招くことができる」と指摘し、ロシアが正式参加しないまでも、招待国として加わることは十分に可能だとの見方を示した。