自民党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した昨年7月の参院選をめぐり、地元議員や元陣営スタッフら約100人に現金を配った疑いが強まったとして、検察当局が公選法違反(買収)容疑で、案里氏と夫で前法相の克行衆院議員(57)=自民、広島3区=を立件する方針を固めたことが11日、関係者への取材で分かった。検察当局は17日の国会閉会後の月内にも本格捜査に踏み切るもようで、証拠関係の精査など詰めの捜査を行っている。
陣営をめぐっては、車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとして、案里氏の公設秘書、立道浩被告(54)と克行氏の元政策秘書、高谷真介被告(43)が起訴され、立道被告は16日に広島地裁で判決が予定されている。さらに、夫妻がそれぞれ広島県内の首長や議員、元陣営スタッフらに現金を手渡すなどした買収疑惑も浮上し、広島地検が捜査していた。
関係者によると、現金は約100人に配られた疑いがあり、1人当たりの受領額は数万円~100万円近くと幅がある。検察側が押収した資料には配布総額が2千万円程度になることを示すものもあるという。
支払われた時期も昨年4月の統一地方選前後から参院選後の同8月ごろまでと幅広く、現金が選挙運動の対価かどうか趣旨の立証が課題だった。5月の連休中などに検察当局の任意聴取を受けた夫妻は、一貫して容疑を否認したが、検察側は現金の多くが公選法の禁じる「当選目的による運動員への現金配布」とみなせると判断したもようだ。
産経新聞の取材では、克行氏が複数の元陣営スタッフに昨年の参院選前後に現金を配ったり、広島県議に同4月ごろ現金入り封筒を置いたりしたことなどが判明。案里氏についても同4~5月、別の県議に現金が入ったとみられる封筒を2回にわたり渡そうとしたことなどが分かっている。
案里氏陣営に対する捜査は、今年1月の家宅捜索から約5カ月が経過。任意聴取を受けた県議の中には買収疑惑を全面否認しているケースもあり、元検事の弁護士らからは「選挙違反は立件まであまり時間をかけない。捜査に苦戦しているのではないか」といった声も出ていた。
最高検は一連の捜査で、昨年末に現職国会議員を逮捕するなど政界捜査で豊富な経験のある東京地検特捜部の検事を広島に派遣。今後、事件を東京に移送することも検討している。