【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は15日、「米国は今でもWHOの加盟国だ」との見方を示した。トランプ米大統領が5月29日にWHO脱退を宣言したが、脱退は現時点で成立していないことが判明した。
オバマ前米政権で国務省法律顧問を務めたエール大のハロルド・コ教授が米法律専門メディアに寄稿したコラムによると、WHO憲章には脱退に関する明文規定がなく、米国が1948年にWHOに加盟する際、米議会は脱退に関する条件を決議した。条件には1年前の通告などが含まれている。
米国が決めたルールに従えば、WHO脱退が成立するのは来年以降になるとみられる。
一方、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は15日、ジュネーブでの記者会見で、中国・北京市で新型コロナウイルスの新たな感染者が確認されたことについて、感染源は特定されていないとの見方を示した。
中国の北京市当局は15日、新型コロナの新たな発症者が14日に36人確認されたと発表した。13日にも36人確認されており、計72人のうち少なくとも70人が同市豊台区の「新発地卸売市場」と関連があるという。首都を震源とする第2波への警戒感が高まっている。
ロイター通信や中国メディアによると、輸入されたサーモンの処理に使われていた新発地卸売市場のまな板から新型コロナのウイルスが検出された。ライアン氏は会見で、輸入サーモンが感染源であるかどうかについては「第1の仮説と確信はしていない」とした上で「何が起きたか突き止める必要がある」と検証する姿勢を示した。